はじめに
オンラインで会社説明会や採用セミナー、製品紹介ウェビナーの数が増えている近年。音声だけの配信だと、聞き逃しや理解不足が気になる場面もあります。そこで注目なのが「ライブキャプション(リアルタイム字幕)」や「文字起こし」です。このコラムでは、ウェビナーでの字幕・文字起こしの仕組みやメリット、設定方法、外部ツールの活用法、実際の導入事例までをわかりやすくご紹介します。
ライブキャプションと文字起こしの基礎知識
ライブキャプションって何?主な働き
ライブキャプションとは、AIの音声認識技術やスタッフによる入力を利用し、ウェビナーやオンライン会議の発言をリアルタイムで画面に文字表示する機能です。
主な役割は以下のとおりです。
- 聞き取りづらい話を文字でカバー
- 専門用語や固有名詞を正確に視覚化
- あとで振り返るときのベース資料
ウェビナーで文字起こしが必要な理由
オンライン説明会や採用イベントでは、次のようなトラブルが起きやすいです。
- ネットワークや機材の不具合で音声が途切れる
- スピーカーの話すスピードが速すぎる
- 専門用語や固有名詞が多く、意味を取り違えやすい
文字起こしを併用すれば、音声とテキストを同時に追えるため、理解度が上がり情報の抜け漏れを防げます。Q&Aの内容やチャットの要点もそのまま記録できるのも大きなメリットです。
キャプションと文字起こしを導入するメリット&注意点
まずは導入のメリットを確認しましょう。
メリット | 内容 |
---|---|
理解サポート | 音声だけに頼らず文字で確認できる |
インクルーシブな環境 | 難聴者や日本語が母語でない方も参加しやすくなる(聴覚障がい者は約34万人、65歳以上では約3分の1に加齢性難聴が見られる) |
事後資料作成の効率化 | 字幕データを議事録やレポートにそのまま活用できる |
コミュニケーション品質向上 | 発言のポイントを共有して誤解を減らせる |
検索可能なアーカイブ化 | 文字データをキーワード検索でき、必要な情報をすぐに見つけられる |
コンテンツの再利用 | 記事やホワイトペーパーなどに二次利用しやすい |
ただし、導入時には以下の点に注意してください。
- 認識精度:マイクの性能や部屋の音響環境によって誤認識が増えることがある
- リアルタイム性:遅延が出ないよう、配信と処理のバランスを調整する
- プライバシー管理:個人情報を含む発言への配慮やルール整備が必要
- 多言語対応:複数言語のセッションでは対応状況を事前にチェック
ウェビナープラットフォームでの字幕・文字起こし設定方法
標準機能を使った設定手順
多くのウェビナーサービスには、標準で字幕や文字起こしの機能が備わっています。主要プラットフォームの設定例をまとめました。
サービス | 設定画面/手順 | ポイント |
---|---|---|
Zoom | アカウント管理 > 設定 > ミーティング > 「自動文字起こし」をON 会議中に「字幕」ボタンをクリック | Zoom Client v5.1.0以降が必要。参加者は字幕のON/OFFや文字サイズ変更が可能 |
Microsoft Teams | 会議オプション > 「文字起こしを記録」にチェック ライブイベントでは「キャプション」を有効化 | 会議開始前に設定を済ませる |
Webex | 設定 > 字幕 > 「自動字幕起動」をON | 日本語対応を事前に確認 |
トラブル発生時のチェックポイント
- 音声が途切れるとき:マイクやネットワークの再接続を試みる
- 字幕の表示が遅れるとき:配信PCの負荷を下げるため、不要なアプリを終了する
- 誤認識が多いとき:高性能マイクやヘッドセットに切り替える
- 言語が混ざるとき:セッションごとに使用言語を固定
- 機能の有効化忘れ:開催前に必ず設定状況を確認
- ソフトの互換性:ZoomやTeamsは最新バージョンにアップデートしておく
外部ツール&APIで文字起こしを強化する方法
ポップアップ型議事録ツールの活用
発言をポップアップで表示する議事録ツールを導入すると、
- 発言者名とテキストをリンク
- 色覚多様性に配慮した配色
- プロジェクタや大画面への出力も可能
音声認識APIと連携する流れ
- API選定(Google Cloud Speech-to-Text、AWS Transcribe、Azure Speechなど)
- OBS Studioなどの配信ツールと連携設定
- APIから返ってきた文字起こしを画面にオーバーレイ
- 必要に応じて、OBS側で映像に遅延やバッファ処理を加え、音声と文字の同期精度を向上
事前埋め込み済み字幕付き動画の作成
録画済みのオンデマンド動画では、あらかじめSRTファイルを用意して字幕を焼き込む方法があります。
- Premiere ProやDaVinci Resolveで字幕埋め込み
- 配信プラットフォームでキャプション表示をONに設定
導入事例&ツール比較
まずは代表的なツールを比較してみましょう。
ツール名 | ライブキャプション | 多言語対応 | オン/オフライン | 自動レポート生成 |
---|---|---|---|---|
Zoom | 〇 | 英語のみ(日本語は手動入力が必要) | オンラインのみ | – |
Microsoft Teams | 〇 | 日本語・英語 | オンラインのみ | – |
AWS Transcribe + OBS | ◎(設定が必要) | 多言語 | オンラインのみ | – |
自社ウェビナー事例
- 採用向け説明会:Q&Aをそのまま文字起こししてログを残し、回答率が向上
- 製品デモ:操作手順や専門用語を字幕で補足し、社内ポータルで文字データを共有
オフラインセミナーでの応用
- 展示会ブース:モニタにリアルタイム字幕を表示し、聴覚障がいのある方にも配慮
- オフライン講演:ノートPCとオフライン対応ツールでネットワークに頼らず字幕提供
おわりに
ウェビナーや説明会でライブキャプションや文字起こしを取り入れると、参加者の理解を助け、誰もが参加しやすい環境を作れます。さらに、事後資料の作成やアーカイブ検索もスムーズに進みます。最近は導入のハードルも下がっているので、プラットフォームの標準機能からAPI連携、専門ツールの利用まで、目的や予算に合わせて最適な方法を選んでみてください。ウェビナー体験をもっと豊かにしていきましょう。