オンラインインタビューの進め方とコツ|メリット・デメリット、手順とツール選びのポイント

目次

はじめに

距離や時間の制約を越えて相手の本音に迫れるオンラインインタビュー。ユーザー調査、採用面接、メディア取材、BtoBの導入事例ヒアリングなど、用途は幅広く広がっています。一方で、回線や機材のトラブル、対面に比べて「場の空気感が掴みにくい」といった独特の難しさもあります。この記事では実施可能な調査手法、メリット・留意点、成功率を高める準備と当日の進行、ツール選定までを一貫して解説します。現場でそのまま使える表やチェックリストも多数掲載していますので、まずは小さく試して改善を重ねてみてください!

オンラインインタビューの基本

オンラインインタビューとは

インターネットを介してビデオ通話や音声通話で行うインタビューで、Zoom、Google Meet、Teamsなどの会議ツールを用いることが一般的です。対象者の態度や意識、利用文脈、意思決定プロセスを深掘りし、製品改善やコンテンツ制作、採用判断、施策立案に役立つ「生きたインサイト」を得ることができます。

オンライン化の主な目的は「アクセス性・スピード・コスト」の最適化にあります。加えて、普段過ごしている場所から参加してもらえるため、参加者がリラックスして率直な発言をしやすくなる――これも大きな利点です。

オンラインで実施する際の前提条件

項目主催側の要件参加者側の要件代替策
通信安定回線(可能なら有線LAN/予備回線)下り上り各5Mbps目安スマホ回線切替、音声通話併用
デバイスPC推奨(カメラ/マイク/スピーカー)PCまたはスマホ/タブレット外付けマイク・ヘッドセット貸与
環境静音・無背景/機密配慮同上(生活音・同居人配慮)バーチャル背景/個室予約
ツール目的に合う機能/セキュリティ使い慣れたもの参加者の慣れに合わせる
同意録音・録画・個人情報の取扱い事前書面/当日再確認録画なしの選択肢

補足:
自宅で実施する場合は「〇時〜〇時は入室しない」など同居人への事前周知が有効です。また、カフェなどの公共スペースは機密漏洩のリスクが高いため、基本は避けてもらうのが無難です。

実施できる調査手法と向き・不向き

1対1ヒアリング(デプス)

目的向いているテーマ主なテクニックコツ
深層の動機や文脈把握購買意思決定、離反理由、体験の痛点ファネル質問、ラダリング、認知インタビュー、プロジェクティブ(擬人化・完成法)画面共有で刺激提示、パラフレーズで要約確認、沈黙を恐れず待つ

補足: 感情のこもった表現は相槌や表情で増幅されます。時折「今、こう理解しましたが合っていますか?」と認識合わせを入れると、回答の精度が高まります。

グループ討議(グルイン)

人数ねらいツール機能活用リスク対策
3〜6名相互作用でアイデアや論点を拡張挙手機能、投票、ブレイクアウト、ホワイトボード発言偏り/同調圧力/被り指名ファシリ、順番制、チャット併用、タイムキープ

補足: 運営しやすい人数は4〜6名が目安。オンラインでは視線が合いにくくターンテイクが乱れがちなので、名前で呼んで指名する、話者をスポットライト表示するなどの工夫が有効です。

行動観察型(エスノグラフィー)

タイプ方法強み制約工夫
同期リモート観察ビデオ通話で自宅/職場の使い方を実況してもらう実環境の文脈を取得画角/解像度/プライバシー事前の片付け・範囲同意、スマホ背面カメラ活用
非同期日誌/写真指定課題を日誌/写真/動画で提出長期時系列データ提出ブレサンプル例/撮影ガイド/提出リマインド

同期観察はリアルタイムの文脈把握に強く、非同期日誌は長期間の行動変化を追えるという長所があります。それぞれの特性を踏まえ、事前の合意範囲や撮影ガイドを整えることが重要です。

オンラインに不適なテーマ・ケース

  • 色味や質感の評価、音質や遅延の精密な検証、香り・味覚、触感や装着感のフィッティング
  • ウェルビーイングや安全配慮が特に必要なセンシティブなテーマ
  • 機密保持が極めて重要で、家庭環境での秘匿管理が困難な場合
  • ITリテラシーや機材要件を満たせない対象者が中心の場合
  • スマホ参加者が多く、画面共有資料や細かい画像が見づらくなる恐れがある場合

こうした場面では対面実施や現物送付を併用したハイブリッドに切り替える判断軸を持つとよいでしょう。

オンラインインタビューの利点

利点具体効果実務インパクト
場所・時間の制約が小さくなる海外/地方/多忙層の参加が容易、早朝/夜間も可サンプルの多様化、スケジューリング短縮
交通費・会場費を抑えられる会場手配/設営撤収が不要調査単価の低減、短期反復調査が可能
心理的負担が少なく本音を引き出しやすい慣れた環境でリラックスデリケート領域での回答質向上
参加者募集の間口が広がる地理要件なし、リードタイム短縮募集成功率UP、偏り軽減
関係者の同席・観察がしやすい社内外の観察・チャットで裏連携合意形成が速い、学習コスト低

オンラインはサンプルの幅を広げたり、短期間で複数回の回収を行ったりする点で強みを発揮します。社内の観察や関係者同席も容易になるため、学習サイクルを速められます。

オンラインインタビューの留意点

課題典型トラブル予防策
通信・機材トラブル音が出ない/映像乱れ/画面共有不可事前テスト、接続手順書、代替手段(電話/SNS)
ITスキル偏り高年齢層・未経験者が不安使い慣れたツール優先、接続サポート枠、ヘルプライン
非言語情報の欠落表情の微細変化/空気感が掴みにくいカメラON徹底、照明/カメラ位置、オーバーリアクション
相互作用の希薄化発言被り/沈黙/独占指名/順番制、投票/ホワイトボード、多人数回避
写真取得の難しさインタビュー風景画像が不足既存素材提供依頼、セルフ撮影ガイド、許可の上スクショ
端末依存スマホ画面が小さく、画面共有資料や画像の判読性が低下可能ならPC参加を案内、スマホ参加時は資料簡略版を事前送付

オンライン特有の弱点を事前に把握し、ツール選びや運用でカバーすることが成功の鍵です。

実施の流れ(やり方)

1. 準備段階

課題の整理とゴール設定

  • 調査課題を「意思決定に必要な未知」に分解します(例:購入阻害要因、利用環境、KBF=Key Buying Factors)。
  • 最終的に必要な成果物の形式を先に決めると進めやすいです(意思決定者向けのスライド構成や評価軸など)。
  • 成功基準も明文化しておきます(例:仮説A/Bの検証可否、改善要件のリストアップなど)。

参加者の募集(リクルーティング)

項目内容実務のコツ
スクリーニング属性/行動/態度/使用状況除外条件を明示、IT環境/端末/ツール経験も設問化
募集チャネル調査パネル/自社顧客/コミュニティ/SNS目的に応じ複線化、謝礼相場を適正化
スケジュール実施2〜3週前から直前キャンセル対策で予備枠を確保

対象者の確定

  • 属性バランスやヘビーユーザー・ライトユーザー・離反者などを組み合わせて情報の幅を確保します。
  • オンライン適性(静かな場所を確保できるか、機材や回線環境が整っているか)も事前に確認しておくと安心です。

インタビューフロー(質問設計)の作成

  • 基本の流れは「導入(関係づくり)→現状把握→具体事例→深掘り→刺激提示→要件抽出→クロージング」です。
  • 所要時間に合わせ、30分単位で香盤表(進行台本)に落とし込み、想定される追問を用意します。
  • 刺激物(画面/試作品/コンセプト)を提示する順序と各露出時間も事前に決めておきましょう。

2. 対象者確定後の連絡・調整

日程と所要時間の共有

候補日を複数提示し、所要時間(例:60分+予備15分)や遅延時の扱いを明記しておきます。

使用ツールの候補提示と確定

参加者の慣れに合わせて第1候補を選び、URLや参加手順、当日の連絡先を事前に送付します。

必要機材・環境の案内

推奨機材(PC/ヘッドセット/照明)、適した場所(静かな個室、無背景)、回線(可能なら有線)を画像や図で示して案内すると親切です。

録音・録画の同意取得

利用目的・保存期間・閲覧権限・削除依頼の窓口などを明記し、事前書面で同意を得ます。ツールの自動通知についても触れておきましょう。

3. 本番前の最終チェック

質問票・香盤表の送付

参加者には概要版の質問項目だけを渡し、ネタバレを避けつつ準備を促します。社内関係者には詳細台本と役割分担を共有します。

環境整備(場所/音声/ネットワーク/ツール)

  • 照明は顔の正面45度、カメラは目線の高さ、背景は無地やブランドに合わせた統一感のあるものを推奨します。ノイズ抑制機能はONに。
  • PCスタンドを使ってカメラ位置を調整すると映りが良くなります。新規機器は前日までに動作確認を。

接続テストとリハーサル

  • 実ツールで5〜10分の接続確認(音声・映像・画面共有・録画・ホワイトボード)を行います。
  • 同室で複数参加する場合はハウリングに注意し、配置や音量を調整してください。
  • 代替連絡手段(電話やチャット)と“落ちた時の再入室手順”を事前に合意しておきます。

4. 当日の進行ポイント(成功のコツ)

冒頭の自己紹介と概要説明

名前・所属・目的・所要時間・録画の再確認・質問の扱い(いつでもか後半にまとめるか)を最初に明確に伝えます。

名前で呼びかけつつアイスブレイクを入れる

「〇〇さん、今日はどちらからですか?」などの軽いやり取りで緊張をほぐします。グループでは全員ひと言ずつの自己紹介を。

ゆっくり明瞭に話す

タイムラグを想定してワンビート置く。重要なポイントは短く区切って繰り返すと理解されやすいです。

大きめの相づち・表情でリアクションする

画面越しは情報が減るため、うなずきや笑顔、手振りを少し大きめに。要約して返すことで安心感を与えます。

全員が均等に発言できるよう配慮する

指名→1分サマリー→追加自由発言の順を作るなど、発言の偏りを防ぎます。観察役が発言ログを可視化して偏りを是正するのも有効です。

遊び心や雑談で緊張を解く

背景テンプレートや投票、軽いクイズで場を温めると本題に入りやすくなります。必要に応じてエフェクトやバーチャル背景で印象を整える手も。

議事録・ログの取り方を決めておく

録画+ライブ文字起こし+観察メモ(発話・行動・示唆)を分担し、重要発言にはタイムスタンプを打ちます。録音を開始しておけば取りこぼしが減ります。

実務ヒント:

  • 刺激提示時は「最初の10秒は無言で見てもらう→第一印象を言語化→理由を深掘り」の順序が効果的です。
  • 沈黙は考えているサインなので、5秒程度待ってから促すと良いでしょう。

5. 実施後の対応

内容の整理(サマリー化)

まとめ方具体項目
ファクトログ重要発言の引用+タイムコード
インサイト行動/文脈/感情の因果関係
機会領域未充足ニーズ、阻害要因、喜びの瞬間
アクション改善要件、仮説、次の検証計画

振り返りと改善点の洗い出し

進行・時間配分・ツール運用・トラブル対応・質問の効き具合をレビューし、再現可能な学びに落とし込みます。次回に向けた改善計画を短いPDCAサイクルで回すと効果的です。

当日のマナーと配慮

カメラオンで表情を見せて話す

表情が見えると相互の安心感と理解の精度が上がります。通信状況が厳しい場合でも冒頭だけはカメラONにして関係性を作るとよいでしょう。

服装や背景など身だしなみを整える

ビジネスカジュアルが目安。背景は無地やブランド基調のものを推奨し、映り込みや逆光は避けてください。

録音・録画の同意を再確認する

開始前に口頭で再確認し、保存先・共有範囲・停止希望時の合図などをあらかじめ伝えておきます。

ツール選びのコツと候補サービス

ツール選定のポイント

料金体系と時間制限

  • 無料プランと有料プランの違い
    無料枠の時間制限(例:Zoomは無料グループ40分、Teamsは無料グループは60分が案内されることが多い/プランによっては会議の上限が最大30時間など)
  • 有料プランのオプションのチェック
    参加上限、クラウド録画、管理機能、ウェビナー機能などの追加機能があります。

補足:
仕様は頻繁に変わるため公式情報で最新確認が必須です。

操作性・導入のしやすさ

ブラウザから参加できるか、アプリが必須か、URLクリックだけで入室できるかを確認しましょう。参加者が使い慣れたツールを優先し、簡易マニュアルを配布するとトラブルが減ります。

セキュリティやモニタリング方法の適合

待機室やパスコード、入室承認、画面共有権限などの設定を確認。録画の保存先やアクセス権、データ保持ポリシーも要チェックです。

代表的なオンライン会議ツール

ツール特徴/強み無料版の目安補足
Zoom安定性/ブレイクアウト/録画/注釈が充実グループは時間制限ありE2EEオプション有、待機室/パスコード
Google Meetブラウザ参加/Google連携/字幕個人向けは時間制限ありカレンダー連携が便利、機密性が重要な場面は自社ポリシー・管理設定の確認を前提に活用
Microsoft Teams企業利用/チャット連携/共同編集プランにより制限会議メモや管理機能が強い

写真・画像を入手する方法

方法手順ポイント注意
既存の写真データを提供宣材/プロフィール/働く様子の素材提供依頼必要解像度/枚数/NG例を明記著作権/肖像権の許諾文面
参加者側で撮影依頼構図サンプルとチェックリストを送付自然光/背景/被写体の目線/横位置推奨撮影負担に配慮し枚数を限定
画面共有/スクショ活用(許可)許可取得→撮影→ファイル名規約個人情報が映らない画面で実施録画・保存先とアクセス制御

簡易チェックリスト例:
顔写真(胸上・横位置・自然光)、環境カット(机・道具・製品)、手元のアップ、無背景の差し替え用など、用途に応じて必要項目を事前に明示しましょう。

3名以上で実施する際のポイント

司会・記録・観察などの役割分担

役割主要タスク
モデレーター場の設計、指名、時間配分、合意形成
ノートテイカー発話ログ/要約/タイムスタンプ
オブザーバー相互作用/感情変化/チャットで裏連携
テクニカル入室管理/録画/トラブル対応

役割を明確にすることで運営の負担が分散し、本来の観察に集中できます。

発言順やタイムキープの設計

  • ラウンドロビン(順番制)→自由討議→投票→まとめの4部制が運営しやすい流れです。
  • 長話防止のため、1人あたり60〜90秒の目安を共有しておくと場が回りやすくなります。

チャット・挙手機能の活用

反対や賛成は絵文字やリアクションで素早く可視化できます。質問はチャットにため、区切りでまとめて回収すると整理しやすいです。

補足(音声トラブル予防):
ハウリングは同じ空間で複数端末が音を拾うと起きやすいので、同室参加はなるべく避けるか、集音マイクをひとつに集約してスピーカー音量を抑えるなどの工夫を。

注意事項とトラブル予防

事前の接続テストを徹底する

参加者ごとに5分程度のテスト枠を設け、OSやブラウザ、マイク、カメラ、画面共有の動作確認を行ってください。予備URL(別ツール)を配布しておくのも有効です。

ツールの時間制限や機能制限を把握する

無料枠の時間や参加上限、録画可否を事前に確認し、超過した場合の再入室運用を決めておきましょう。例えばZoomの無料グループは40分制限など、仕様は変わるため公式情報で最新確認を。

代替手段(別ツール・電話)の用意

音声は電話やVoIPに切替え、資料はメールやチャットで共有、ビデオが無理なら音声だけで継続する、といった代替案を用意しておくと安心です。

機材・ネットワークのバックアッププラン

想定トラブル即応策予防
マイク不調イヤホンマイクに切替予備機常備、設定手順書
回線不安定カメラOFF/音声のみ/電話併用有線LAN/モバイル回線準備
画面共有不可事前配布資料で代替PDF化/共有権限確認

想定トラブルと対応策を事前にチームで共有しておくと、当日の混乱を最小限にできます。

おわりに

オンラインインタビューは、短期間で多様な声に触れ、学習サイクルを速める力があります。成功のコツは「設計8割・当日2割」。目的と成功基準を明確にしたうえで、参加者に優しいツールと段取り、画面越しでも伝わる丁寧なコミュニケーションを積み重ねれば、対面に劣らない濃いインサイトが得られます。本記事の手順やチェックリストを土台に、まずは小さく始めて改善を繰り返し、組織の標準プロセスへと育てていきましょう。

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