実務で使える議事録の作り方:テンプレート・書き方のコツ・効率化ツール活用法

目次

はじめに

会議が終わってから「結局、何が決まったんだっけ?」とならないために、一目で要点と次のアクションが分かる議事録は業務を前に進める強力な武器です。本記事は、すぐ使えるフォーマットと記入サンプル、作成のスピードと品質を両立させる実践的なコツ、さらにAIやツールの活用法までを一貫して解説します。重要会議だけでなく、短時間の打ち合わせでも簡易議事録を残す習慣を推奨します。

本記事のポイント

  • 汎用の「基本フォーマット」と、実行に特化した「アクション特化フォーマット」の2種類を用意。コピーしてすぐ使えます。
  • NG/OK例を示し、読み手に伝わる書き方を具体比較。
  • 会議前の準備、当日のメモ術、レビュー運用まで、実務に落とし込める手順を提示。
  • GoogleドキュメントやOneNote、AI文字起こし、AI議事録サービスの使い分けを整理。
  • AI利用時の誤認識やセキュリティを含むリスク管理チェックリストを付録。

議事録の役割とねらい

議事録には主に次のような目的があり、それぞれ具体的な効果と注意点があります。

ねらい具体的効果失敗例成功のポイント
記録の正確性を確保する発言の有無や数値を確認でき、振り返りが速くなる発言者名や数値が曖昧主語(誰が)と数値・日付を必ず添える
関係者への周知とナレッジ化参加していない人にも同じ理解を伝達できる時系列の羅列で全体像が掴めない見出し・表・箇条で構造化し要点提示
タスク・期限・担当の明確化実行責任と締切管理がしやすくなるTODOが散在し、期限が未記載アクションは独立セクションで一覧管理
認識合わせと合意形成の土台合意範囲や前提のズレを早期に是正合意条件や前提が書かれていない決定事項に前提・除外・条件を併記
法的な根拠資料紛争時や監査での証拠として機能主観的・曖昧な記述が多い事実と意見を分け、承認者を明示

補足:議事録の目的は「決定重視」と「経緯重視」の二つがあり、どちらを重視するかで記録の範囲や粒度が変わります。初回は上司や先輩に「どこまで残すか」を確認しておくと安心です。また、株主総会など一部会議は法的に議事録作成が義務付けられているため、正確性と承認プロセスを厳密にする必要があります。適用される法域や自社の定款によって保存期間や署名/押印の扱いが異なるため、要件を事前に確認しておくと安全です。

良い議事録の条件と見分け方

押さえておきたい4つの品質基準

  • 正確性:数値・日付・発言者など事実ベースで記載する。
  • 完結性:決定・未決・保留・タスクが過不足なく揃っている。
  • 可読性:1文1情報、見出しや表・箇条で視認性を高める。
  • 実行性:担当・期限・合意条件が明確で、そのままタスク化できる粒度。

文体ルールは統一しておくと良い(例:常体で統一)。二重否定は避け、必要に応じて体言止めで簡潔にまとめる。

例で比較:避けたい書き方/望ましい書き方

ありがちな読みづらい例

「9/下旬に発表会。PR会社はAとB。見積もりをもらっている。サンプリングはやる方向。インフルエンサー施策も検討する。次回までに進める。」

問題点:誰が何をいつまでにやるのか、何が決定で何が保留かが不明確。

理解しやすいサンプル

セクション記載
議題新商品発表会の外部PR委託と付随施策
決定事項発表会は9月25〜30日の週で調整(最終確定は9/5まで):承認者=広報部長
保留PR会社の選定(A社/B社)—比較指標は費用/実績/体制/危機対応
タスク1)A/B見積再提示依頼:担当=清水、期限=8/30 2)会場仮押さえ:担当=太田、期限=8/28
メモサンプリングは実施方針。対象媒体の優先度はWeb>紙。数は2,000個目安。

このように議題ごとに「決定/保留/タスク」を分けると読み手が理解しやすく、次の行動に直結します。

基本フォーマットと必須項目

ベースとなる構成

項目ねらい書き方のポイント
タイトル・見出し会議の識別プロジェクト名+種別+回次(例:新商品発表会 進捗会議 第3回)
会議の基本情報会議の所属と開催情報を明確化日時(開始/終了)、場所/URL、出席/欠席、作成者・承認者記載
目的・アジェンダ・議題議論のゴールを共有目的は1行、議題は箇条で主要項目に絞る(目安:5項目程度)
議論の要点と決定事項合意内容を明確化決定事項は条件・範囲・期日・承認者を併記
確認事項未確定のポイントを独立記載誰が・何を・いつまでに・どこへ確認するかを明示
アクションアイテム実行につなげるタスク/担当/期限/状態/優先度/連絡先を表で管理
次回予定会議の継続性を担保日時/場所/予告議題/持ち物を記載
補足・参考リンク背景理解の補強資料やスライドのURL、ファイル名を添付

フォーマットの活かし方

  • 事前準備を怠らない:前回の決定や宿題をテンプレに転記しておけば抜け漏れを防げる。
  • 決定を明確に切り出す:決定事項は議題と分離して冒頭や独立表に表示する。
  • 短く読みやすく:1文1情報を心がけ、常体で冗長を避ける。必要なら体言止めで締める。
  • 構成別に整理:時系列ではなく「議題別」「要点/決定/確認/保留/タスク」に分けて記録すると参照性が上がる。

作成前の段取り

段取り目的実行チェック
ひな形やテンプレートを用意抜け漏れ防止部署共通テンプレの最新版を用意/自分用の略語ルールも準備
会議の目的と参加者の役割を把握重点を見失わないため裁決者・説明者・関係部署・ステークホルダーを事前に特定
記録方針の事前合意粒度を揃えるため議事録が「決定重視」か「経緯重視」かを上司・先輩に確認
収集方法の設計(録音・メモ・AIの併用)精度と速度の両立録音許可の取得、文字起こしツールの接続、共同編集の担当割りを決める(例:書き起こし=Google Meet、要約=ChatGPT)

事前に「誰が何をするか」を決めておくと、会議中の混乱が減り記録も正確になります。

その場で要点を拾うメモ術

議事録の精度は会議中のメモで決まります。押さえておきたいポイントは次の通りです。

  • 数字とキーワードを優先して記録する:金額・数量・日付・バージョン・KPIは最優先。
  • 記号・装飾・略語を賢く使う:◎=決定、△=保留、?=要確認、→=結論、○=賛成、×=反対、[A]=A社。
    頻出語は事前に略語を定義しておく。
  • 類似発言はまとめる:似た論点はグルーピングして要旨を1つにまとめると後処理が楽。
  • 議題と結論をセットで書く:議題の横に即「結論:〜」と書き留めるクセをつける。
  • 5W1Hで抜け漏れを防ぐ:タスク行にはWho/What/When/Where/Why/Howを入れる。
  • 発言者・担当者を明記する:「発言:(部署・氏名)」「承認:(役職・氏名)」と括弧で添える。
  • 事実と意見を区別する:事実は通常行、意見や懸念は[意見]ラベルで示す。
  • 会議直後にフォローする:聞き漏れや未確定箇所は色付けして会議当日中に確認を取る。

例:決定事項のミニフォーマット

  • 決定:PR会社はA社を第1候補(理由:費用対効果と危機対応実績)
  • 条件:司会はA社提案A-3案、費用上限150万円
  • 承認:広報部長(氏名)
  • 期日:9/5最終確定

この形式をテンプレ化しておくと、議論がまとまる瞬間にすぐ決定として切り出せます。

わかりやすく伝わる書き方のコツ

  • 客観性を重視する:形容詞を避け、数値や根拠で表現する(例:“多い”→“1,200件”)。
  • 端的にまとめる:接続詞を最小限に、1文は40字程度を目安にすると読みやすい。
  • 具体的に書く:期日“来週”→“9/6(金)17:00”、場所“社内”→“第1会議室”のように具体化する。
  • 構造を意識する:決定事項とタスクは必ず表で整理し、視覚的に把握しやすくする。
  • リアルタイムで転記する:結論が出た瞬間に“決定”表へ移す習慣をつける。
  • 発言の公平な扱い:少数意見も理由つきで1行にまとめる。重要な反対意見は背景も記載する。
  • 見直しと承認を組み込む:承認者のチェック欄をテンプレに入れておく。
  • 用語を統一する:敬体/常体の統一、部内略語は注記を添える。二重否定は避ける。
  • 図表やリンクを活用する:ホワイトボードの写真や資料URLを添えると状況理解が速い。

これらを守るだけで、読み手が迷わず行動に移せる議事録になります。

つまずきやすい課題と対処法

課題よくある原因対処法(実効性順)
作成に時間がかかる時系列に書き散らす/録音を丸ごと起こし直す①議題別に記録→決定/確認/保留/タスクの4表に集約 ②AI文字起こしは“下書き”扱いに限定 ③前回宿題を事前転記
重要ポイントの取りこぼし裁決者や論点が把握できていない①目的・裁決者・KPIを会議前に確認 ②決定が出たら即“決定事項”表へ移す ③録音+共同編集で不足部分を補う
品質のばらつきと共有の遅れ個人スキルに依存/統一様式がない①共通テンプレと用語ガイドを作る ②レビュー/承認フローを定義 ③配布期限(例:会議後24時間以内)をルール化

小さな運用ルールを決めておけば、個人差は短期間で解消できます。

ツール活用で効率アップ

ツールをうまく選び分けると、作成速度と精度が両立します。

ドキュメント・ノート系ツール

Googleドキュメント

  • 強み:同時編集、コメント・提案モード、版管理、テンプレ共有が得意。
  • 使いどころ:関係者が多く、共同編集が必要な定例会議。
  • 小ワザ:議題ごとに見出しを設定して自動目次を作成。アクション表は別シートへ複製すると管理しやすい。

OneNote

  • 強み:手書きメモや画像、音声を一元管理でき、タブレットでの取り回しが便利。
  • 使いどころ:現場や出先で図やホワイトボードを即取り込む場面。
  • 注意:機能はデスクトップ/モバイル/Webで差がある(例:Web版は音声録音が使えない場合あり)。導入前に自社環境での対応機能を確認する。

録音・文字起こしの利用

  • オンライン会議では自動文字起こしをONにする(事前に同意を取ること。プラン/契約により提供有無が異なる)。
  • 固有名詞辞書を事前登録できるツールは、文字起こし精度が安定しやすい。

生成AIやAI議事録サービスの活用

AIチャットツール(例:ChatGPT、Gemini)の使いどころ

  • フォーマット整形:箇条メモをテンプレに合わせて整形してもらう。
  • 言い換え・要約:冗長な議論を「決定・根拠・条件」の3ブロックに整理。
  • 抜け漏れ検知:「5W1Hの欠落」を指摘して追記案を出す。

プロンプト例:
「以下の会議メモを、決定事項/確認事項/保留/アクション表(担当・期限・優先度)を含む議事録に整形してください。常体・1文1情報・表中心で。」

専用のAI議事録ツールの特徴

主な機能:文字起こし、話者識別、要約、タスク抽出、検索・共有など。

導入前に各ツールの仕様・価格、データの保存先や保持期間などのセキュリティ条件を公式情報で確認してください。

AI活用時のリスク管理

誤認識・変換ミスのチェック

  • 専門用語や固有名詞、数値は必ず人の目で検算する。
  • 話者誤認が多い会議では、発言者を都度口頭で宣言する運用にする。

要約への依存を避ける

  • 決定・条件・承認者の3点は原文で確認することを原則化。
  • 重要会議は“AI要約+人のサマリー”の二段構えで精度を担保。

セキュリティと機密保持

  • データの保存場所・保存期間・所在(国内/国外)を事前に確認。
  • 個人情報や機密はマスキングやアクセス制御で保護する。

社内ポリシーと運用ルール

  • 使ってよいAIとその用途(記録/要約/外部共有の可否)を明文化する。
  • 自動生成の議事録は必ず人がチェック・承認してから配布する。
  • 具体例:音声の書き起こしはGoogle Meet、要約はChatGPT、保存は社内Drive、承認は部長チェック後に配布。

配布前チェックリスト:

  • 固有名詞/金額/期日が正しいか。
  • 承認者の明記と最終承認が済んでいるか。
  • タスクに担当/期限/完了定義/優先度があるか。
  • 機密や個人情報の扱いに問題がないか。

すぐに使えるサンプルとテンプレート集

ひな形の例(標準フォーマット)

項目入力欄
会議名
日時
場所/URL
出席者/欠席者
作成/承認
署名/押印作成者サイン:____/責任者確認印:____
目的1行で明確に
議題・ ・ ・
決定事項・(承認者: )(条件: )(期日: )
確認事項・(確認先: )(担当: )(期限: )
保留/懸案・理由/前提を添える
アクション一覧下表に記載
次回予定日時: /場所: /予告議題:
補足/参考資料名・リンク・添付

注:署名/押印欄は運用上の記入欄です。要否は会議種別や自社の定款・法域により異なります(例:株主総会議事録は原則押印不要、取締役会議事録の紙原本では署名/記名押印が必要となる場合あり)。自社ルールに従って運用してください。

ひな形の例(アクション特化フォーマット)

セクション内容
サマリー(3行)1)本日の決定 2)主要保留 3)クリティカルアクション
主要KPI/基準今回の判断基準・成功条件
決定事項(条件つき)箇条書き+承認者
確認事項所管/確認先/必要資料/期限
保留・要確認所管/確認先/必要資料
アクション表タスク/担当/所属・連絡先/期限/優先度/完了定義/依存関係

記入例のサンプル(製品発表会プロジェクト)

項目記載例
会議名新製品「AirPlus」発表会 準備会議 第3回
日時2025/08/22(金) 13:00–13:50
場所/URLA会議室(オンライン:Teams)
出席者/欠席者出:広報部長 佐々木、宣伝 大西、PR 清水、販促 太田、PM 泉/欠:マーケ部長 佐藤
作成/承認作成:泉/承認:佐々木
署名/押印作成者サイン:泉__/責任者確認印:佐々木__
目的発表会日程・PR委託・サンプリング有無の最終方針を固める
議題1. 発表会日程 2. PR会社選定 3. サンプリング計画
決定事項・日程は9/26(木) 14:00開始で会場仮押さえ継続(承認:佐々木)・PR会社はA社を第1候補、B社をバックアップ(条件:司会A-3案、費用上限150万円、危機対応SLA付与)・サンプリング2,000個をメディア/インフルエンサーへ段階配布
確認事項・A社SLA条項の適用範囲(確認先:法務部、担当:泉、期限:8/26)・司会者A-3案の当日拘束時間(確認先:A社、担当:清水、期限:8/23)
保留/懸案・A社最終見積(内訳明細)確認:費用項目の妥当性・司会者スケジュール確定
次回予定2025/08/29(金) 10:00/第1会議室/議題:見積最終確認・媒体リスト承認
補足/参考発表会企画案v3、メディア優先度マトリクス、想定Q&A草案

アクション一覧(記入例)

No.タスク担当所属/連絡先期限優先度状態備考
1A社最終見積(明細)取得清水PR課・s.shimizu@example.com8/26A着手司会A-3案の費用内訳含む
2会場仮押さえ延長確定太田販促・t.ota@example.com8/23A完了キャンセル規定確認済み
3サンプル在庫数の確定PM室・izumi@example.com8/23B進行2,000個確保、追加調達可否
4媒体リストたたき台作成清水PR課・s.shimizu@example.com8/27B未着手優先度A/B/C分類で提示

このサンプルをそのまま使うか、組織の運用に合わせて微調整して使ってください。

実務を前に進める議事録づくりのヒント

  • メモから意思決定ドキュメントへ:冒頭に3行サマリー(決定/保留/アクション)を置く習慣をつける。
  • 決定と次アクションを推進する書き方:決定には前提・条件・除外範囲を明記し、アクションには「完了の定義(DoD)」を添える。
  • 読み手ファースト運用:会議終了後24〜48時間以内を目安に配布し、重要箇所はハイライト、関係者別のToDo抜粋版を併送すると着手率が上がる(運用ルールとして明文化)。
  • 継続会議の強化:前回タスクの結果・阻害要因・対策案を冒頭で棚卸しし、次の決定へ直結させる。

ちょっとした運用改善が、会議の生産性を大きく変えます。

おわりに

議事録は単なる「記録」ではなく、実行を始めるためのスタートラインです。フォーマットで抜け漏れを防ぎ、表で可読性を上げ、AIや共同編集でスピードを確保する。この三位一体の運用で、会議後の迷いは減り決定と実行が前に進みます。ここで紹介したフォーマットとコツを試し、まずは次回会議で「冒頭3行サマリー+アクション表」を運用してみてください。レビューと改善を重ねれば、着実に精度は上がります。

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