インタビュー取材の準備・進め方・企画書作成のポイントと実践ノウハウ

目次

はじめに

「重要な質問を聞き逃した」「録音トラブルで素材が足りない」「企画の前提が食い違っていた」。

こうした“漏れ”は、準備と運用の設計でかなり防げます。本記事ではインタビューでの漏れを防ぐ方法を軸に、企画書作成から当日の聞き出し方、事後の編集・共有まで、工程ごとに実践的なノウハウをまとめました。テンプレやチェックリスト、言い換え例、録音の冗長化など、すぐに使える具体策を揃えています。

インタビュー取材の全体像と企画書の位置づけ

企画書が果たす役割と期待できる効果

役割目的期待効果漏れ防止の観点
合意形成の土台目的・範囲・体制・条件を可視化承諾率向上、すれ違いの減少6W3Hで記載漏れを防ぐ
当日のガイド進行とタイムラインを共有時間超過や深掘り不足を抑制マイルストーン管理で優先事項を守る
リスク管理撮影可否や守秘・謝礼・権利を明記トラブルや差し戻しの回避事前合意で後戻りを防ぐ
社内共有背景・狙い・読者像の同期執筆・編集のブレを減らす必須質問の統一で比較可能にする

補足:企業広報の裁量で記事が大幅にカットされることは珍しくありません。企画書段階で「掲載NG(例:未公開情報、社名出し不可)」や記事の方向性を広報と擦り合わせておくと、差し戻しや大幅修正のリスクを下げられます。

インタビューの基本フロー(準備/当日/事後)

フェーズ主なタスク成功指標漏れ防止ポイント
準備目的定義、対象選定、事前リサーチ、企画書作成、アポ取得、質問設計、機材確認事前合意完了、質問リストの完成、スケジュール確定6W3H網羅、必須質問チェック、録音2系統準備
当日オープニング、進行、深掘り、撮影、記録、クロージング必須項目の完全取得、深掘りの質、時間遵守キューシート運用、Yes/No回避、要点メモ+タイムスタンプ
事後謝礼・お礼、原稿作成、確認フロー、公開、反響共有、ナレッジ化スピード公開、関係継続、学びの蓄積A4一枚で要点化、タグ付け、次回課題の明確化

取材前に整える基盤づくり

目的と対象者の明確化

項目やることチェック
目的の一文化例:「価格判断のロジックを明らかにする」書けないなら目的が曖昧
対象定義業種、役職、利用歴、意思決定関与度なぜ適切か説明できるか
比較設計共通質問+深掘り観点の統一横比較できる設計か

取材で聞くべきこと/個人的興味の線引き

  • 聞くべきこと(必須):比較可能な事実(直近事例、頻度、金額、判断の瞬間)。
  • 聞きたいこと(探索):独自性や人間味(背景の価値観、意外なエピソード)。
  • 運用:必須→探索の順で進め、時間が押したら必須を優先します。

質問設計と事前仮説の立て方

質問目的フォロー(深掘り)
最後に◯◯を使ったのはいつ?何をしようと?行動の事実取得その時の選択肢/迷い/環境(どんな場面で求めたか:出張中・通勤中・自宅 など)
比較した候補と軸は?判断基準の抽出軸の重み/誰が影響したか/時間的優先順位
価格で迷った点は?価格許容の根拠比較対象/代償/条件付き許容
  • 仮説は短くフロー図でまとめると現場で扱いやすい(「仮説A→検証質問→分岐→深掘り」)。

事前資料の共有・運用ルール

  • 事前共有は「課題仮説(1枚)+当日の流れ(1枚)」に限定し、解決策の詳細は後日提示する運用が安心感を生みます。
  • 守秘・撮影・確認フローなどの安心材料は明記してください(例:当日の流れ、安全上の注意、守秘義務の範囲)。
  • 目的は先入観を与えず、リラックスして臨めることです。

取材者のマインドセット(共創姿勢と好奇心)

  • 冒頭で「一緒に良い記事をつくりましょう」と共創姿勢を示す。
  • 事前リサーチで「ここをもっと知りたい」3点をメモにしておく。
  • 自己抑制の付せんを用意:「質問は短く」「沈黙を恐れない」「売り込み禁止」。

企画書の作り方と必須項目

「6W3H」を使うと漏れは激減します。以下をベースにA4一枚でまとめるのが目安です。

項目要点記載例チェック
媒体の概要と想定読者媒体名、URL、コンセプト、読者像BtoB SaaSの導入事例メディア/読者は情シスリンク切れなし/未立ち上げなら立ち上げ予定日を明記
企画の狙い・テーマ・掲載方針Why/Whatを明確に「導入判断のロジックを可視化」目的が一文で言えるか
候補日時と所要時間の提示When/How many候補3日+拘束60–90分幅を持たせたか
当日の進行プランタイムラインと章立て5分挨拶→40分本編→10分撮影→5分クロージング余白10–15%
取材体制Who/Whom/役割ライター1、メモ1、カメラ1同行者と役割明記(規模感や話しやすさが伝わる)
写真撮影の有無と使用予定カット撮影可否、点数、用途肩上、手元、集合、外観NG条件の有無(撮影が謝礼条件に影響する場合は明記)
想定質問リスト(主要トピック)必須質問+深掘り観点判断基準/比較対象/直近事例Yes/No排除(全質問を載せる必要はない。確定後に事前共有)
謝礼・条件・注意事項How much、交通費、権利・校正謝礼◯円、交通費別、掲載前確認あり権利帰属明記(撮影有無で金額が変わる場合は前提と合わせて明示)
連絡先と窓口の明記担当/メール/電話/住所企画担当・編集・当日連絡先当日直通番号
参考情報過去事例、掲載予定日類似事例2本、◯月公開予定期待値調整文/予定変更時は速やかに連絡

承諾率を高める工夫

A4一枚で要点を可視化する

  • 1枚で全体像が把握できる構成にします。詳細は別紙リンクで補足。
  • 図解(タイムライン・体制図)を入れると視認性が上がります。
  • 一枚に収まらない場合は、2枚に分けるか別紙を付けるなど、読みやすさを優先してください。

相手に配慮した日程・場所の提案

  • 候補3日+時間帯(午前/午後)を提示し、オンライン可否も明記。
  • 先方オフィス近隣やオンラインで移動負担を軽減しましょう。

選定理由と熱意を簡潔に伝える

  • 「なぜこの人か」を2〜3行で説明。過去の発言や成果と企画の親和性を示すと説得力が出ます。
  • 読者メリット(誰にどう役立つか)も添えると承諾率が上がります。

記入例とカスタマイズの考え方

セクション記入例カスタマイズのコツ
タイトル「情シスが語るSaaS導入の決め手」読者の検索意図に寄せた言葉を入れると見つかりやすくなる
企画の狙い「導入判断のロジックを事例で再現」目的は1文で。評価軸を明確にする
当日の進行章1:現状と課題/章2:検討と比較/章3:決定と効果起承転結で並べると聞き漏れが減る
想定質問(必須)直近の導入検討の流れ、比較軸Top3、反対意見と乗り越え方、最終決裁の条件、メトリクス変化共通質問は5〜7個に絞るのが目安
深掘り観点判断基準の重み、代替手段、失敗回避策、価格許容の根拠、時間的優先順位比較可能な“向き”を揃えると分析がやりやすい

依頼・アポイントの進め方

目安は2週間前:日程調整の段取り

  • 2週間前を目安に打診、可能なら1カ月前に仮押さえ。
  • 候補3日+オンライン可否、移動負担の少ない会場を提案。
  • 媒体が未立ち上げの場合は立ち上げ予定日を伝えておく。

「なぜこの人か」を示して想いを伝える

  • 選定理由(実績・視点)と読者メリットを具体的に。
  • 月間PVや読者像、掲載後の可視化メリットを一言添えると効果的です。

依頼文・企画書で概要と体制を簡潔に共有

  • 6W3Hに沿って依頼文を構成し、A4一枚の企画書を添える。
  • 当日直通の連絡先と緊急時の対応を明記してください。

事前リサーチのやり方(人物・文脈・公開情報)

  • 公開インタビュー、登壇資料、SNS、直近ニュースを確認する。
  • その人ならではのキーワードや切り口を洗い出しておく。
  • 既出の話は要約して省略し、未出の角度を当日深掘りすると有効です。

当日の進め方と聞き出しの技術

導入から核心へ:質問の流れを組み立てる

フェーズ目安目的
導入0–5分目的・流れ共有、安心感の醸成「今日は45分、前半は事実、後半はご意見を伺います」
事実5–25分直近事例を時系列で取得起→承→転→結で進めると漏れが減る
判断25–40分基準・比較・価格について深掘り「その瞬間、何を重視しましたか?」
総括40–50分学び・教訓・未来の展望「同僚に助言するとしたら何と言いますか?」

エピソードの深掘りとフォローアップ

  • 深掘り4視点:状況/行動/判断基準/こだわり。
  • トリガー語(困った・迷った・失敗)を聞き逃さないで。出たら必ず1問深掘りしましょう。
  • 「発言要因カード」を手元に置き、重要語が出たら即フォローする運用にすると抜け漏れが減ります。

真の傾聴:沈黙・うなずき・要約の活用

  • 3〜7秒の沈黙を恐れない(相手の文化背景により感じ方は異なるので調整を)。
  • 「つまり〜という理解で合っていますか?」で認識合わせ。
  • 感情面にも触れる:「その時どう感じましたか?」と一言加えると本音が出やすくなります。

閉じた問いを避ける言い換えと開かれた質問

  • NG例:「必要ですか?」→ OK例:「どんな場面で必要になりますか?」
  • NG例:「買いますか?」→ OK例:「購入を決める際、何を比べますか?」

判断プロセスを探る聞き方(例:価格判断のロジック)

  • 比較対象は? 価値要素は? 許容される条件は? 何を諦めたか?
  • 可能なら社内で数式や基準に落とし込める形で話を引き出すと再現性が高まります。

深掘りのタイミングを見極める基準

目的直結、抽象的、トリガー語が出た、矛盾が見えたときは深掘りの合図です。

yes/no回避のフレーズ

  • 「具体的にはどんな時に?」
  • 「最後にそれを使ったのはいつで、何をしようと?」

答えを引き出す定型フレーズ集(接続詞・枕詞)

用途フレーズ使いどころ
話題転換「ところで」横展開する時
補足要請「ちなみに」補足事項を引き出す時
深掘り「もう少しだけ教えていただけますか?」詳細を求める時
具体化「具体的には…?」抽象的な発言を具体化する時
要約確認「つまり〜という理解で合っていますか?」認識合わせの時

非言語サイン(視線・姿勢・間)で引き出す

  • 小さな相槌、開いた姿勢、視線の高さを合わせる。
  • 声が弱まる・言い淀む場面では「そこをもう少し具体的に教えてください」と促すと効果的です。

会話の主導権を保ちながら促す方法

  • 冒頭で時間配分を共有しておくと脱線しにくくなります。
  • 脱線したら軌道修正フレーズで本題に戻す。

誘導・売り込みを避ける言い回し

状況NG中立的言い換え
機能の評価「この機能便利ですよね?」「その状況では普段どうしていますか?」
価格確認「この価格なら買えますよね?」「似たサービスでいくらくらい払いましたか?」

雑談を活かして余白から情報を得る

前後の移動や雑談で、最近の変化やホットトピックを拾っておくと意外な材料が手に入ります。

撮影の段取りとバリエーション確保

  • 必要枚数に余剰を持たせて撮影(表情/手元/引き/環境)。
  • 光源チェック、背景整理、縦横両パターンを確保。
  • 撮影の有無は謝礼条件に影響することがあるので、点数や用途と合わせて事前に明記してください。

記録の最適化:メモ・録音・文字起こしの使い分け

ツール役割コツ
要点メモ示唆の抽出要旨+キーワード+タイムスタンプで残す
録音正確性の担保許可取得、開始・終了を宣言(法域による要件を事前確認)
文字起こし検索と共有全文より要旨抽出を優先して使う
リアルタイム共有画面複数人取材の共通参照事前にフォーマットを決め同時編集で進行を可視化する

冗長性の確保:録音は2系統以上で

  • スマホ+ICレコーダー、またはラベリアマイク+カメラ音声など複数系統で録音する。
  • バッテリー・ストレージは必ず事前確認を。機器ごとに感度や特性が違うため、片方で拾えなかった音がもう一方で拾えることがあります。

クロージング:次回合意とネクストステップ

  • 「本日の内容を要約してお送りします。必要があれば追加で10分だけお時間いただけますか?」
  • 確認フローと公開予定日を再共有。予定に変更がある場合は必ず連絡しましょう。

取材後のフォローと編集の進め方

謝意を伝え、必要に応じて追加ヒアリング

  • 24時間以内にお礼とハイライト3点を送付しましょう(目安。案件や相手の都合に応じて調整)。
  • お礼文には特に印象に残ったエピソードと、記事での扱い方を具体的に添えると安心感が高まります。
  • 追加質問は回答しやすい形式で、期限に余裕を持たせて依頼します。

速やかな原稿作成と確認フローの設計

  • 当日〜翌日に構成と要点をA4一枚にまとめると編集もスムーズです。
  • 校正は「事実誤認の訂正」を主眼にし、デッドラインを共有してください。
  • 公開予定が変わる場合は、確定次第速やかに先方に連絡します。
  • これらのタイミングは推奨目安です。締切や案件の性質に応じて適宜調整してください。

公開後の反応を共有し関係を育てる

  • PVや引用、SNSでの反応を要約して共有しましょう。
  • 次企画の打診やアップデート時の再取材の種を蒔いておくと関係継続につながります。

記録整理と学びの蓄積(ナレッジ化)

項目優先度やること
重要発言の要約A4一枚サマリ化
チーム共有(3行サマリ)誰でもすぐ読める3行要約を併記
タグ付け行動/判断/感情で分類
次回課題追加質問と対象を決める
素材整理音声索引、写真キャプションを整備

成功の鍵は準備力と信頼構築

共同でつくる姿勢を貫く

相手の安全・時間・意図に配慮し、安心して語れる場づくりを最優先にします。相手が協力的になるほど深い話が出やすくなります。

期待値調整と透明性の確保

目的・範囲・条件・確認フローを事前に合意し、当日も再確認する。透明性が信頼を生み、結果として漏れを減らします。

おわりに

インタビューの“漏れ”は偶然ではなく、設計と運用で防げます。A4一枚の企画書で合意を固め、必須質問を厳選して深掘りの「向き」を揃え、当日は2系統録音+要点メモで重要発言を逃さない。事後はA4要約とタグ付けで学びを蓄積し、チームで型を共有して小さなルールを徹底すれば、毎回の成果は確実に積み上がります。今日の取材から、漏れないインタビュー運用を始めましょう。

国内最高精度96.2%の音声認識で、議事録作成のお悩みを解決しませんか

会議をデータ化し、DXを推進したい
会議後すぐに議事録を共有したい
議事録作成の業務負荷を減らしたい

SecureMemoは、クラウド/オンプレミス両対応の文字起こしツールです。
独自の音声認識AI「shirushi」により、96.2%の認識精度で会議音声を自動で文字起こし。
話者識別・自動要約・多言語翻訳など、議事録作成に必要な機能をすべて備えています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次