役員会議事録作成の基本:必要な項目と書き方のポイント

はじめに

役員会議事録は、企業の意思決定プロセスを記録する重要な文書です。特に取締役会や監査役会などの役員会議では、議事録の作成が法的に義務付けられており、その内容は企業の運営において非常に重要な役割を果たします。本記事では、役員会議事録の基本的な項目や書き方のポイントについて詳しく解説します。これから役員会議事録を作成する方や、既に作成している方にとっても、役立つ情報を提供します。

役員会議事録とは

役員会議事録は、取締役会や監査役会などの役員会議で議論された内容や決議事項を記録する文書です。これは企業の意思決定プロセスを透明にし、後から内容を確認するための重要な資料となります。

役員会議事録の重要性

役員会議事録は、企業の意思決定の透明性を確保するために非常に重要です。議事録を作成することで、会議で何が話し合われ、どのような決定がなされたのかを明確に記録できます。これにより、後からの確認や紛争の防止、さらには法的な証拠としても利用されます。
例えば、ある取締役会で新しい事業計画が承認された場合、その詳細な議論内容や決議結果を記録しておくことで、後からその決定の正当性を証明することができます。また、役員会議事録は株主や監査役、さらには外部の監査機関に対しても企業の透明性を示す重要な資料となります。

役員会議事録の作成が求められる理由

役員会議事録の作成が求められる理由は主に以下の3つです。

  1. 法的義務: 会社法により、取締役会や監査役会の議事録は法定文書として作成が義務付けられています。これに違反すると、取締役や監査役が法的な責任を負う可能性があります。
  2. 意思決定の証拠: 役員会議事録は、企業の意思決定プロセスを証明する重要な証拠となります。特に、後からその決定が問題となった場合に、議事録がその正当性を証明する役割を果たします。
  3. 透明性の確保: 役員会議事録を作成することで、企業の意思決定プロセスが透明になり、内部および外部のステークホルダーに対して信頼性を高めることができます。

役員会議事録と一般的な議事録の違い

役員会議事録と一般的な議事録にはいくつかの重要な違いがあります。

  1. 法的義務: 役員会議事録は法定文書であり、会社法に基づいて作成が義務付けられています。一方、一般的な議事録は法的な義務はなく、主に会議の内容を記録し、関係者と共有するために作成されます。
  2. 記載内容: 役員会議事録には、出席者の氏名、議事の経過、決議事項など、詳細な情報が記載される必要があります。一般的な議事録は、これほど詳細な情報を記載する必要はありません。
  3. 署名・押印: 役員会議事録には、出席した取締役や監査役の署名または記名押印が必要です。一般的な議事録にはこのような規定はありません。
    例えば、取締役会議事録には、出席した取締役や監査役の氏名、議事の経過、決議事項の詳細が記載され、全員の署名または記名押印が必要です。一方、一般的な会議の議事録は、会議の内容を簡潔に記録し、関係者と共有するためのものであり、署名や押印は必須ではありません。
    以上のように、役員会議事録は企業の運営において非常に重要な役割を果たしており、その作成には細心の注意が必要です。次のセクションでは、具体的な役員会議事録の形式と作成方法について詳しく解説します。

役員会議事録の形式と作成方法

役員会議事録の作成には、書面による方法と電子議事録による方法があります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、企業のニーズに応じて選択することが重要です。

書面による作成

書面による作成は、伝統的な方法であり、紙に記録を残す形式です。この方法では、会議の内容を手書きまたは印刷して記録し、出席者の署名や押印を行います。以下に、書面による作成の具体的な手順を示します。

  1. 議事録の作成: 会議の内容を詳細に記録します。議事の経過や決議事項、出席者の発言内容などを漏れなく記載します。
  2. 署名・押印: 出席した取締役や監査役が議事録に署名または記名押印を行います。これにより、議事録の正当性が保証されます。
  3. 保管: 作成した議事録は、法定期間(通常10年間)保管する必要があります。紙媒体の場合、適切な保管場所を確保し、紛失や破損を防ぐための対策を講じます。
    書面による作成は、法的に確実な方法であり、特に電子署名に不安がある場合や、法的な証拠としての信頼性を重視する場合に適しています。

電子議事録の作成方法

電子議事録は、デジタル形式で議事録を作成・保管する方法です。近年、リモートワークの普及に伴い、電子議事録の利用が増加しています。以下に、電子議事録の作成手順を示します。

  1. 議事録の作成: 会議の内容をデジタル形式で記録します。WordやGoogle Docsなどの文書作成ソフトを使用して、議事の経過や決議事項を詳細に記載します。
  2. 電子署名: 出席した取締役や監査役が電子署名を行います。電子署名は、電子署名法に基づいて行われ、法的に有効なものとされます。
  3. 保管: 作成した電子議事録は、クラウドストレージや社内サーバーに保管します。デジタル形式のため、検索や共有が容易であり、保管スペースも節約できます。
    電子議事録は、リモートワークやペーパーレス化を推進する企業にとって非常に便利な方法です。ただし、セキュリティ対策や電子署名の法的有効性を確認することが重要です。

役員会議事録の一般的な形式

役員会議事録の形式は、法的要件を満たすために一定の項目を含む必要があります。以下に、一般的な役員会議事録の形式を示します。

  1. 標題: 「取締役会議事録」や「第○回取締役会議事録」といった標題を記載します。
  2. 開催日時と場所: 会議が開催された日時と場所を明記します。
  3. 出席者の詳細: 出席した取締役や監査役の氏名を記載します。特別利害取締役がいる場合は、その氏名も記載します。
  4. 議長の役割: 議長の氏名を記載し、議長が会議を進行したことを明示します。
  5. 議事の経過と結果: 議事の経過や決議事項の詳細を記載します。開会と閉会の宣言、報告事項、決議事項の採決結果などを含めます。
  6. 署名・押印: 出席した取締役や監査役の署名または記名押印を行います。電子議事録の場合は、電子署名を行います。
    この形式に従って作成することで、法的要件を満たし、後からの確認や証拠としての利用が容易になります。

役員会議事録に記載すべき内容

役員会議事録には、法的に必要な項目を漏れなく記載することが求められます。以下に、記載すべき主要な内容を詳しく説明します。

標題

標題は、議事録の内容を一目で理解できるようにするために重要です。一般的には「取締役会議事録」や「第○回取締役会議事録」と記載します。これにより、議事録の種類や回数が明確になります。

開催日時と場所

会議が開催された具体的な日時と場所を記載します。例えば、「2023年10月1日 午前10時から12時まで、本社会議室にて開催」といった形で詳細に記載します。これにより、会議の正確なタイミングと場所が明確になります。

出席者の詳細

出席者の詳細は、会議の正当性を証明するために重要です。以下の項目を記載します。

取締役・監査役

出席した取締役と監査役の氏名を記載します。例えば、「出席取締役:田中一郎、佐藤次郎、鈴木花子」「出席監査役:高橋三郎」といった形で記載します。

執行役・会計参与・会計監査人・株主

会議に出席した執行役、会計参与、会計監査人、株主の氏名を記載します。例えば、「出席執行役:山田太郎」「出席会計参与:中村一郎」といった形で記載します。

特別利害取締役

特別利害取締役がいる場合、その氏名と利害関係を記載します。例えば、「特別利害取締役:佐藤次郎(株式会社ABCの代表取締役)」といった形で記載します。

議長の役割

議長の氏名を記載し、議長が会議を進行したことを明示します。例えば、「議長:田中一郎」と記載します。議長は、会議の進行役として重要な役割を果たします。

議事の経過と結果

議事の経過と結果は、会議の内容を詳細に記録するために重要です。以下の項目を含めます。

開会と閉会の宣言

議長による開会宣言と閉会宣言を記載します。例えば、「議長は午前10時に開会を宣言し、午後12時に閉会を宣言した」と記載します。

報告事項

各取締役から報告された事項を記載します。例えば、「田中一郎取締役から新規事業計画について報告があった」と記載します。

決議事項の採決結果

決議事項についての採決結果を記載します。例えば、「第1号議案『新規事業計画の承認』について、賛成3名、反対0名で可決された」と記載します。
以上の内容を詳細に記載することで、役員会議事録は法的に有効な文書となり、後からの確認や証拠としての利用が容易になります。役員会議事録の作成には細心の注意を払い、正確かつ詳細に記録することが求められます。

役員会議事録の作成時期と署名

役員会議事録の作成時期と署名は、法的な要件を満たすために非常に重要です。適切なタイミングで作成し、必要な署名や押印を行うことで、議事録の正当性と信頼性を確保します。

作成すべきタイミング

役員会議事録の作成時期については、会社法上明確な期限は定められていません。しかし、実務上は取締役会の開催日と同日に作成することが推奨されています。これは、会議の内容を正確に記録するためです。会議が終了した直後に議事録を作成することで、記憶が鮮明なうちに詳細な内容を記録できます。
例えば、取締役会が午前10時に開催され、午後12時に終了した場合、その日のうちに議事録を作成し、出席者全員の確認を得ることが理想的です。これにより、後からの確認や修正が最小限に抑えられ、議事録の信頼性が高まります。

記名押印と電子署名のルール

役員会議事録には、出席した取締役や監査役の署名または記名押印が必要です。これは、議事録の正当性を保証するための重要な手続きです。具体的には、以下の方法があります。

  1. 署名: 出席者が自筆で氏名を記入する方法です。これは最も伝統的で信頼性の高い方法とされています。
  2. 記名押印: 自筆以外の方法で氏名を記入し、その横に印鑑を押す方法です。実務上は、記名押印が一般的に使用されており、印鑑は認印でも構いません。
    近年では、電子署名の利用も増えています。電子署名は、電子署名法に基づいて行われ、法的に有効とされています。電子署名を利用することで、リモートワークやペーパーレス化を推進する企業にとって非常に便利です。例えば、クラウド上で議事録を作成し、出席者が各自のデバイスから電子署名を行うことで、迅速かつ効率的に手続きを完了できます。

役員会議事録の保管と閲覧

役員会議事録の保管と閲覧は、法的要件を満たすために重要なプロセスです。適切な保管方法と閲覧対応を行うことで、企業の透明性と信頼性を高めることができます。

保管方法と期間

役員会議事録は、取締役会の日から10年間、会社の本店に保管することが義務付けられています(会社法371条1項)。この期間中、議事録は適切に保管され、紛失や破損を防ぐための対策が必要です。

  • 紙媒体の場合: 議事録を紙で保管する場合、耐久性のあるファイルやバインダーに収納し、火災や水害から守るための対策を講じます。例えば、耐火金庫に保管することが推奨されます。
  • 電子媒体の場合: 電子議事録を保管する場合、クラウドストレージや社内サーバーに保存します。デジタル形式のため、バックアップを定期的に行い、セキュリティ対策を強化することが重要です。例えば、データの暗号化やアクセス制限を設けることで、情報漏洩を防ぎます。

閲覧・謄写請求の対応

役員会議事録は、株主や債権者などのステークホルダーに対して閲覧や謄写の請求が行われることがあります。会社法371条2項に基づき、株主は権利行使のために必要がある場合、会社の営業時間内に議事録の閲覧または謄写を請求することができます。
ただし、以下のような特定の機関設計を持つ会社では、閲覧・謄写の請求には裁判所の許可が必要です(会社法371条3項・5項)。

  • 監査役(会)設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社
    閲覧や謄写の請求があった場合、迅速かつ適切に対応することが求められます。例えば、請求があった際には、議事録のコピーを提供するか、閲覧用のスペースを設けて対応します。これにより、企業の透明性を高め、ステークホルダーの信頼を得ることができます。
    以上のように、役員会議事録の作成時期と署名、保管と閲覧については、法的要件を満たすために細心の注意を払うことが重要です。適切な手続きを行うことで、企業の信頼性と透明性を確保し、法的リスクを回避することができます。

役員会議事録の作成例

役員会議事録の作成には、実際の会議開催時、Web会議や電話会議、書面決議(みなし決議)、書面報告など、さまざまな状況に応じた記載例があります。以下に、それぞれのケースにおける具体的な記載例を紹介します。

実際の会議開催時の記載例

実際に会議が開催された場合の役員会議事録の記載例は以下の通りです。

〇〇株式会社 取締役会 議事録
開催日時:2023年10月1日 午前10時から12時まで
開催場所:〇〇株式会社 本社会議室
取締役総数:5名(出席取締役5名)
監査役総数:2名(出席監査役2名)
出席取締役:
- 田中一郎(議長・議事録作成者)
- 佐藤次郎
- 鈴木花子
- 山田太郎
- 中村一郎
出席監査役:
- 高橋三郎
- 松本四郎
議長:田中一郎
議事の経過および結果:
1. 開会の宣言
   議長の田中一郎が午前10時に開会を宣言。
2. 報告事項
   - 田中一郎取締役より、新規事業計画について報告があった。
   - 鈴木花子取締役より、前期決算報告が行われた。
3. 決議事項
   - 第1号議案「新規事業計画の承認」について、賛成5名、反対0名で可決。
   - 第2号議案「前期決算の承認」について、賛成5名、反対0名で可決。
4. 閉会の宣言
   議長の田中一郎が午後12時に閉会を宣言。
署名:
議長兼議事録作成者 田中一郎 署名・印
出席取締役 佐藤次郎 署名・印
出席取締役 鈴木花子 署名・印
出席取締役 山田太郎 署名・印
出席取締役 中村一郎 署名・印
出席監査役 高橋三郎 署名・印
出席監査役 松本四郎 署名・印

書面決議(みなし決議)の記載例

書面決議(みなし決議)の場合の記載例は以下の通りです。

〇〇株式会社 取締役会 議事録
決議日:2023年10月1日
取締役総数:5名(全員書面にて同意)
提案者:田中一郎
決議事項:
1. 第1号議案「新規事業計画の承認」について、全取締役が書面にて同意。
2. 第2号議案「前期決算の承認」について、全取締役が書面にて同意。
署名:
提案者 田中一郎 署名・印
取締役 佐藤次郎 署名・印
取締役 鈴木花子 署名・印
取締役 山田太郎 署名・印
取締役 中村一郎 署名・印

書面報告の場合の記載例

書面報告の場合の記載例は以下の通りです。

〇〇株式会社 取締役会 議事録
報告日:2023年10月1日
取締役総数:5名(全員書面にて報告を受領)
報告事項:
1. 田中一郎取締役より、新規事業計画について書面にて報告。
2. 鈴木花子取締役より、前期決算報告を書面にて報告。
署名:
報告者 田中一郎 署名・印
取締役 佐藤次郎 署名・印
取締役 鈴木花子 署名・印
取締役 山田太郎 署名・印
取締役 中村一郎 署名・印

役員会議事録作成のポイントと注意点

役員会議事録を作成する際には、いくつかの重要なポイントと注意点があります。以下に、特に押さえておきたい点を解説します。

議事の経過と結果を詳細に記録する

議事録の主な目的は、会議の議事の経過と結果を正確に記録することです。議題ごとに、内容、質疑応答、決議に至るまでの過程などを詳細に記載します。特に、決議事項については、賛成・反対の数や特別利害関係を有する取締役の氏名なども明記する必要があります。

客観的かつ正確な表現を心がける

議事録は、会社の意思決定の記録であり、後日の参照や証拠としても重要な文書です。そのため、主観的な表現や不正確な記述は避ける必要があります。客観的かつ正確な表現を心がけ、事実に基づいて記載することを大切に、曖昧な表現や誤解を招くような記述はできるだけ控えましょう。

署名・記名押印または電子署名を忘れない

議事録の末尾には、出席した取締役と監査役の署名または記名押印が必要です。印鑑は、届出印を使用します。最近では、電子署名による記名も認められていますが、その場合は電子署名及び認証業務に関する法律に基づき、適切な方法で行わなければなりません。署名・押印漏れがないよう、十分に確認しましょう。

議事録の保管方法にも注意する

作成した議事録は、適切に保管することが求められます。電子データは、バックアップを取り、セキュリティ対策を講じることが重要です。紙媒体の議事録の場合は、鍵のかけられる場所に保管し、火災や水害などの危険から守る必要があります。また、議事録は10年間の保存が義務付けられているため、保管期間にも注意しましょう。
以上のポイントを押さえて、正確かつ効率的な役員会議事録の作成を心がけましょう。

役員会議事録作成を支援するツール

役員会議事録の作成は、企業の意思決定プロセスを記録するために非常に重要です。しかし、手作業での議事録作成は時間と労力がかかるため、効率化が求められます。そこで、AIツールを活用することで、議事録作成のプロセスを大幅に簡略化することができます。

AIツールは、音声認識技術を利用して会議の内容を自動的に文字起こしすることができます。これにより、議事録作成の手間を大幅に削減し、正確な記録を残すことが可能です。

おわりに

役員会議事録の作成は、企業の意思決定プロセスを記録するために欠かせない作業です。しかし、手作業での議事録作成は時間と労力がかかるため、AIツールを活用することで効率化を図ることが重要です。自動文字起こしサービスを利用することで、リアルタイムでの文字起こしや会議の要約が簡単に行え、議事録作成の手間を大幅に削減することができます。これにより、企業はより迅速かつ正確に意思決定を行うことができるでしょう。

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