取締役会議事録とは?ひな形&書き方のポイントを解説

目次

はじめに

「取締役会の議事録担当になったけれど、具体的に何をどこまで書けばいいのかわからない……」 「オンライン開催や電子署名の場合、これまでの書き方で大丈夫だろうか?」

取締役会の議事録作成は、単なる会議の記録ではありません。会社法で義務付けられた重要な業務であり、不備があれば過料(罰金)や決議が無効になるといった深刻なリスクを伴います。しかし、いざ実務に取り掛かると、法的なルールと現場の運用スピードをどう両立させるか迷う場面も多いはずです。

そこで本記事では、取締役会議事録の書き方に悩む実務担当者の方向けに、以下のポイントを分かりやすく整理しました。

  • 「何を書くべきか」(必須記載事項と現場で役立つメモのコツ)
  • 「いつ、誰が、どう作るか」(作成期限や署名・押印のルール)
  • 「最新の運用はどうなっているか」(ウェブ会議、電子署名、書面決議の対応)

これらを、現場でそのまま使える文例も交えて解説します。この記事が、皆さんの会社のガバナンス体制を整え、日々の実務をスムーズに進めるためのガイドブックになれば幸いです。

【基本】取締役会議事録とは?(義務・期限・リスク)

取締役会議事録は、会社法によって作成と保管が厳格に義務付けられている法定文書です。単なる社内メモとは異なり、決定事項の正当性を証明する唯一の公式書類となります。

取締役会議事録の役割

なぜこれほどまでに重要視されるのか、主な理由は以下の3点です。

  • 意思決定の証拠: いつ、誰が、何を根拠に決定したかを可視化し、後日の紛争を防ぎます。
  • 役員の責任証明: 取締役が適切に善管注意義務を果たしたことを証明する材料になります。
  • 外部への公開義務: 登記申請や、株主・債権者からの閲覧請求に対応する必要があります。

開催のルールと作成期限

実務において最も注意すべきなのは、開催の頻度と作成のスピードです。

項目内容・ルール実務上のポイント
開催頻度3か月に1回以上の開催が必須多くの企業では月次(毎月1回)の定例開催が標準的です。
成立要件原則として議決に加われる取締役の過半数の出席定款で3分の2以上などと厳しく定めている場合もあります。
作成期限取締役会終了後、遅滞なく作成登記が必要な決議(役員変更など)がある場合は、2週間以内に完成させるのが目安です。
保管期間本店で10年間保管紙での保管のほか、一定の要件を満たせばデータ保存も可能です。

知っておきたい未作成・不備のリスク

議事録の作成を怠ったり、虚偽の記載をしたりした場合には、会社として大きなダメージを受ける可能性があります。

  • 100万円以下の過料(罰金): 代表取締役などが個人的に罰金を科せられるリスクがあります。
  • 登記が受理されない: 代表取締役の変更など、議事録が添付書類となる手続きがストップします。
  • 決議が無効になる: 手続きの不備を突かれ、取締役会での決定そのものが否定される恐れがあります。
  • 監査での指摘: 監査役や会計監査人からガバナンス不備として指摘を受け、企業の信頼を損ないます。

Point

先延ばしにするのが一番のリスクです。記憶が鮮明な開催当日〜3営業日以内に下書きを完成させるワークフローを定着させましょう。

【実践】議事録に必ず書くべき10項目

取締役会議事録に記載すべき内容は、会社法施行規則によって細かく定められています。現場でそのまま使えるチェックリスト形式で、書き方のポイントを整理しました。

取締役会議事録の必須項目チェックリスト

以下の10項目は、漏れがあると法的な不備となる可能性がある重要な要素です。

項目記載のポイント
1. 開催日時・場所年月日に加え、開始・終了時刻まで記録します。ウェブ会議の場合は主会場と出席方法を併記します。
2. 招集の経緯通常は代表取締役が招集しますが、監査役の請求など特別な事情がある場合はその根拠条文も添えて記載します。
3. 出席者の状況取締役・監査役の総数と、実際の出席者数を明記します。会計監査人やオブザーバーが同席した場合もその氏名を残します。
4. 議長の氏名会議を進行した議長の氏名を記載します。
5. 議事の経過の要領提案の内容・出された意見(質疑)・修正点などを、後から経緯が追える程度の粒度でまとめます。
6. 議決の結果各議案が承認されたかどうかを記します。満場一致でない場合は、賛成・反対の数も記録します。
7. 特別利害関係者議題に対して直接的な利害関係がある取締役がいる場合、その氏名と、採決に加わらなかった事実を明記します。
8. 反対・留保意見取締役会で反対意見や重要な指摘が出た場合、その発言内容を記録します。これは取締役の責任を明確にするために不可欠です。
9. 議事録作成者の氏名実際に議事録を作成した責任者の氏名を記載します。
10. 署名または記名押印出席した取締役・監査役全員が署名や押印(または電子署名)を行います。

現場で迷いやすいポイントの解説

議事録を効率よく、かつ正確に作成するために以下の3点に注意してください。

① 発言はどこまで書くべきか?

裁判の証拠にもなる文書ですが、すべての会話を書き起こす逐語録にする必要はありません。重要なのは経営判断のプロセスです。なぜその結論に至ったのか、リスクとしてどのような点を確認したのかという要点を絞って記載しましょう。

② ウェブ会議での場所の書き方

ウェブ会議システムなどを使ったオンライン開催の場合、場所の欄には事務局などが所在する物理的な場所(例:本社第1会議室)を記載した上で、ウェブ会議システムにより開催し、出席者が音声・映像で即時に意見表明できる環境であった旨を書き添えるのが実務的なスタンダードです。

③ 署名・押印の運用ルール

紙の議事録の場合、出席した役員全員の署名または記名押印が必要です。特に代表取締役を選定する回など、登記が絡む場合は実印と印鑑証明書が必要になるケースがあるため、事前に法務担当や司法書士に確認しておくと段取りがスムーズになります。電子署名を利用する場合は、会社法に対応したクラウドサイン等のサービスを利用し、本人性が証明できるログを残すようにしましょう。

【運用】作成〜保管までのフロー(オンライン・電子署名対応)

議事録は書いて終わりではありません。役員の確認を経て、正しい形で保管するまでが事務局の仕事です。ここでは、現代のスタンダードであるオンライン・デジタル対応を含めた一連の流れを解説します。

作成から保管までの4ステップ

効率的かつミスのない運用を行うための理想的なスケジュールは以下の通りです。

  1. ドラフト作成(当日〜3日以内)
    あらかじめ用意した雛形に、会議中のメモを反映させます。記憶が新しいうちに決議事項と付帯条件を正確に書き起こすのがコツです。

  2. 内容のレビュー(3日〜1週間以内)
    議長(代表取締役)や法務担当者、監査役へ下書きを回し、事実相違がないか確認を受けます。ここで修正を済ませることで、後の差し戻しを防げます。

  3. 署名・押印の回収(速やかに)
    修正済みの議事録に対し、出席した役員全員から署名・押印(または電子署名)をもらいます。

  4. 原本の備置・保管
    完成した議事録を本店の書庫、またはセキュアなストレージに保管します。あわせて、写しを登記申請などの実務に回します。

紙と電子署名の違い・使い分け

最近では、持ち回り押印の手間を省くために電子署名を導入する企業が増えています。それぞれの特徴を理解して運用しましょう。

比較項目紙の議事録(従来型)電子署名(デジタル型)
署名方法出席役員による自署または記名押印クラウド署名サービス等による電子署名
メリット登記官や銀行担当者が扱い慣れている郵送・持ち回りの時間がゼロになり、紛失リスクもない
注意点代表取締役の選定時は実印が必要な場合がある会社法に準拠したシステム(タイムスタンプ等)が必要
保管方法耐火金庫などの物理的なセキュリティID/パスワード管理、バックアップの徹底

ウェブ会議で開催した場合の運用ポイント

オンライン会議で議事録を作成する際は、以下の2点を確認し、本文にも反映させることが実務上のマナーであり法的な備えになります。

  • 双方向性の確保
    全員が遅延なく発言・聴取でき、対面と同じように議論ができたことを確認し、その旨を記録に残します。

  • 通信障害への備え
    万が一、通信が途絶えて出席人数が足りなくなった場合、その間の決議は無効になる恐れがあります。障害が起きた際の経緯や、再接続後の確認プロセスも必要に応じてメモに残しておきましょう。

効率化のためのツール活用

初期ドラフトの作成には、会議の録音やAIによる文字起こしツールを活用するのが非常に有効です。ただし、ツールが書き出したテキストはあくまで素材です。法的要件を満たしているか、経営判断のポイントが抜けていないか、必ず人の目でチェックして要領としてまとめ直すことが、質の高い議事録づくりの近道です。

【特殊ケース】書面決議と報告省略

実務においては、緊急を要する案件や軽微な事項について、一箇所に集まらずに意思決定を済ませたい場面があります。これを書面決議(みなし決議)や報告の省略と呼びますが、これらを行うには法的な条件をクリアする必要があります。

決議の省略(書面決議)の進め方

取締役が集まる時間を確保できない場合でも、定款に定めがあれば、書面やメールのやり取りだけで取締役会で決議があったとみなすことができます。

  • 実施の条件
    • 定款に、会社法370条に基づく書面決議ができるという定めがあること。
    • 取締役の全員が提案に対して書面または電磁的記録(メール等)で同意すること。
    • 監査役がその提案に対して異議を述べないこと。

  • 議事録の記載ポイント
    • 決議があったものとみなされた日(全員の同意が出揃った日)
    • 提案の内容と同意した取締役の氏名
    • 監査役が異議を述べなかった旨
    • 議事録作成者の氏名

報告の省略ができるケース

取締役会では、各取締役が自分の業務の状況を報告する義務がありますが、全員に対してその内容を通知した場合は、会議の席での報告を省略できます。

  • 省略できるもの
    取締役または監査役が、取締役および監査役の全員に対して報告事項をあらかじめ通知した場合には、取締役会の場での報告を省略することができます。
    この場合、通知の事実と内容を明確に記録として残しておくことが重要です。

  • 省略できないもの
    3か月に1回以上の職務執行状況の報告は、省略することができません。
    この報告については、必ず実際に取締役会を開催する必要があります。開催方法は対面でもウェブ会議でも構いませんが、正式な会議として実施し、議事録を作成することが求められます。

書面決議・報告省略の運用メリットと注意点

これらの制度をうまく活用することで、機動的な経営が可能になります。

項目メリット運用の注意点
書面決議招集の手間が省け、迅速に意思決定できる。1人でも反対、あるいは返信がない場合は成立しない。
報告省略会議の時間を短縮し、重要議題に集中できる。報告内容が全員に正しく伝わった証拠(通知の履歴)を残す必要がある。

いずれのケースも議事録を作成しなくてよいわけではありません。書面決議を行ったという事実を記録した議事録を作成し、10年間保管する義務がある点は通常の取締役会と同じです。証跡(同意したメールや書面)もセットで保管しておくと、後の監査対応が非常にスムーズになります。

【ケース別】そのまま使える文例集

議事録の本文はだ・である調で簡潔に記述するのが基本です。ここでは、実務で頻出する4つのシーンを想定した文例を紹介します。自社の状況に合わせて適宜調整して活用してください。

① 代表取締役を選定する場合(役員変更など)

役員改選時や代表者の交代時に使用します。登記申請に直結するため、最も正確さが求められる文例です。

第1号議案 代表取締役選定の件
議長より、本日開催の定時株主総会において取締役が選任されたことを受け、本取締役会において代表取締役1名を選定したい旨の提案がなされた。 審議の結果、出席取締役の全員一致をもって、以下の者を代表取締役に選定した。なお、被選定者はその就任を承諾した。

代表取締役:〇〇 〇〇(氏名)

② 株主総会の招集を決定する場合

毎期の定時株主総会や、臨時株主総会を開催する前に必ず必要となる決議です。

第1号議案 第〇回定時株主総会招集の件
議長より、第〇期定時株主総会を以下の要領で開催したい旨の提案がなされた。審議の結果、全員一致をもって原案通り承認可決した。

  1. 開催日時:20XX年〇月〇日 午前10時
  2. 開催場所:当社 本社第1会議室
  3. 会議の目的事項(議題):
    (1) 報告事項:第〇期事業報告の件……
    (2) 決議事項:第1号議案 剰余金処分の件……

③ 譲渡制限株式の譲渡を承認する場合(ウェブ会議併用)

ウェブ会議を利用した際の特記事項を含めた文例です。

開催方法に関する特記事項
本取締役会は、ウェブ会議システムを利用して開催された。出席した役員全員が音声および映像の即時双方向性を確保しており、対面開催と同等の適切な意見表明が可能であることを確認した。

第1号議案 株式譲渡承認の件
議長より、株主〇〇 〇〇氏から提出された株式譲渡承認請求に基づき、その内容について説明がなされた。審議の結果、当社の発行する譲渡制限株式について、以下の譲渡を承認することを全員一致で可決した。

  1. 譲渡人:〇〇 〇〇
  2. 譲受人:〇〇 〇〇
  3. 譲渡株式数:普通株式 〇〇株

④ 書面決議(みなし決議)を行う場合

実際に集まらずに、メールや書面のみで決議を成立させた際の特殊な書き方です。

取締役会議事録(決議の省略)

  1. 決議があったものとみなされた日:20XX年〇月〇日
  2. 決議の目的である事項:〇〇不動産売却の件
  3. 経過: 上記提案について、議決に加わることができる取締役全員から電磁的記録(メール)により同意の意思表示を得た。また、監査役からも本提案について異議がない旨の確認を得たため、会社法第370条および当社定款第〇条に基づき、本提案を可決する旨の取締役会決議があったものとみなされた。
  4. 議事録作成者:代表取締役 〇〇 〇〇

よくある質問とリスクへの備え

実務を進める中で、外部から議事録の開示を求められたり、運用に不安を感じたりすることがあります。現場で役立つ知識をQ&A形式でまとめました。

Q1. 株主や債権者から「議事録を見せてほしい」と言われたら?

株主や債権者から議事録の閲覧やコピーを求められた場合、会社は原則としてそれに応じる義務があります。
ただし、不当な目的があるなど例外的に拒否できるケースもありますが、自己判断は禁物です。誰が、いつ、何の目的で請求したかを正確に記録し、機密情報の扱いや開示の判断基準について事前に専門家と協議して対応マニュアルを作っておくと、現場でもスムーズに対応できます。

Q2. 議事録が未作成だったり、内容が間違っていたりするとどうなる?

議事録の未作成や内容の間違いは、単なる事務的なミスでは済まされない重大なリスクを伴います。もし作成を怠ったり、虚偽の記載をしたり、適切に保管していなかったりした場合には、代表取締役などに100万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。
さらに、議事録がないことで決議そのものの有効性を証明できず、後から決定事項をひっくり返されてしまう恐れもあるため、確実な作成が不可欠です。

Q3. 欠席した取締役への対応はどうすればいい?

欠席した取締役は議決に加わることができず、代理人を立てることも認められません。実務上は、議事録に欠席の事実を明記するだけでよく、その方の署名や押印は不要です。
一方、出席しながら議事録に異議を残さなかった取締役は、その決議に賛成したとみなされる点には注意が必要です。後のトラブルを防ぐためにも、もし内容に納得していない役員がいる場合は、その意見を正しく記録に残すようにしましょう。

おわりに

取締役会議事録は、単なる会議の記録ではなく、会社の意思決定が正当に行われたことを証明する、最も強力な法定文書です。

作成において大切なのは、完璧な文章を目指すことよりも、まずは以下の3点を確実に守ることです。

  1. 必須項目を漏れなく記載する
  2. 決められた期限(遅滞なく)を守る
  3. 正しい手順で署名・保管を行う

オンライン開催や電子署名といった新しい運用も、基本のルールさえ押さえておけば決して難しいものではありません。本稿で紹介したチェックリストや文例を自社の標準として活用し、スムーズでミスのない事務局運営を目指してください。

まずは次回の取締役会に向けて、最新の法令に沿った自社専用のテンプレートを作成することから始めてみてはいかがでしょうか。

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