インタビューの本質を捉える!聞き出し技術を磨くポイント

目次

はじめに

インタビューやヒアリングを成功させる鍵は、どこにあるのでしょうか。 本記事では、準備段階から質問設計、場づくり、当日の進行、深掘りのテクニックまで、そのプロセス全体を一貫して解説します。 初心者の方がすぐに実践できる基本の「型」から、プロフェッショナルが駆使する「間」の取り方、鋭い切り返し、質問の磨き方といった高度な技術まで、幅広く網羅しました。 まずは基本を確実に押さえ、次に応用へと進んでいきましょう。

インタビューの目的と向き合い方

無意識や真意をすくい上げる場であるという理解

以下の層を意識すると、問うべき深さと順序が見えてきます。表層から深層へ順に掘ることで、単なる事実説明を越えた「その人固有の物語」が浮かび上がります。

目線捉え方具体
表層事実・出来事「いつ」「どこで」「何が起きたか」
中層背景・文脈「なぜそうしたか」「誰が関わったか」
深層意味づけ・価値観「それはあなたにとって何だったか」「どんな学びがあったか」

インタビューはアンケートとは違い、相手自身の言葉で背景や動機、価値観を引き出す場です。単に事実を並べるのではなく、言語化されにくい内面まで届くように意図して進めましょう。

相手自身の言葉で語ってもらう価値

相手の生の語りは、読み手・視聴者に強い説得力と共感を与えます。下の表が示すように、本人の語彙や躊躇まで記録されることで、等身大のストーリーが立ち上がります。

価値効果
本人の語彙・比喩説得力とリアリティが増す
迷いや逡巡ごと記録等身大のストーリーが立ち上がる
引用可能なフレーズ編集・二次利用がしやすい/誤解が生まれにくい

メディアによって注意点は変わります。文字取材は編集で形を整えやすく、映像取材は「その言葉を本人が口にしている」瞬間を確実に抑える必要があります。センシティブな表現は収録中に本人に確認し、公開前の合意を取っておくとトラブルを防げます。映像では言葉がそのまま証拠になるため、オフレコの範囲や使用可否は事前と当日の二重確認が望ましいです。加えて、録音・録画に関する同意の要件は国や地域によって異なるため、該当する法域のルールを事前に確認し、適切な同意を得てから進めましょう。

ありがちな失敗と避けるべき振る舞い

まず陥りやすいパターンを知ることで、意図的に回避できます。単に質問を並べるだけでは会話は広がりませんし、自分が話しすぎると相手の発言量が減ります。以下の表は典型的な失敗と対処のコツです。

よくある失敗何が起きるか回避のコツ
質問を並べるだけYes/Noで閉じる、会話が広がらないオープン→深掘り→確認の三拍子を守る
受け身で聞くだけ表層情報に留まる要約・反射で“意味”に踏み込む
自分が話しすぎる主役を奪い、時間が消える雑談は短く、1問1意図で進行
あいまいなやりとり誤解・編集事故のリスク用語定義・数字・時期をその場で明確化

悪いインタビューの4類型

  • ただ質問するだけ:詰問調になり、相手は短い返答で終えてしまう。
  • ただ話を聞くだけ:表面的な事象しか残らない。
  • 自分が話すだけ:主役が入れ替わり、信頼を損なう。
  • あいまいなやりとり:曖昧なまま進み、編集や公開時に齟齬が生まれる。

どのケースでも共通する改善点は「相手の話をどう深めるか」を常に意識すること。定期的に要約し、事実と意味を分けて確認すると良いでしょう。

良いインタビューを支える土台

台本に縛られず、その場の対話を尊重する

事前の台本は方向付けに役立ちますが、当日は相手の語りに合わせて柔軟に進めるべきです。想定外が出たら仮説をいったん横に置き、語りの流れを優先しましょう。話が脱線しないよう「Parkingリスト」(後で回収する話題)を作っておくと便利です。

想定と違う展開になったときは、「なぜ?」を丁寧に重ねて背景を掘ることが第一歩。詰めるような問い方ではなく、理由や条件を静かに探る態度が信頼を保ちます。段階的に幅を狭めていく典型的なフローは以下の通りです:
「どうですか?」→「なぜ?」→「現状は?」→「具体的には?」→「ではどうすれば良い?」

沈黙を味方にして“間”を活かす

沈黙には種類があり、それぞれに適した対応があります。単に埋めようとせず、相手の思考を待つ姿勢を持つと本音が出やすくなります。

沈黙の種類サイン取るべき行動
考える沈黙視線が泳ぐ/上を見る、口が少し開く、手が動く待つ。うなずきと柔らかい表情で支える
迷う沈黙額にしわ、質問を聞き返す質問を言い換え、選択肢や枠を提示

沈黙を恐れず待てるかどうかが、インタビューの深度を左右します。余白を贈るつもりで待ってみましょう。なお、これらのサインはあくまで推測の手がかりであり、表情や視線だけで意図を断定しないこと。待つ長さも相手や状況に合わせて柔軟に調整してください(数秒の沈黙が有効な場面は多い)。

複数の問いかけの型を持ち替える

質問の型を意識的に使い分けると、話の角度が変わり新しい言葉が出やすくなります。以下の型は使い勝手が良いので、状況に合わせて切り替えてみてください。

用途
ストーリー喚起情景と流れを出す「その日の朝から順に教えてください」
対比変化の本質を掘る「以前と今、決定的に違う点は?」
尺度強度を測る「10点満点で言うと? なぜその点数?」
限定具体化「一番時間がかかった工程は?」
仮説検証論点を素早く前進「要因はA>人材、B>資金、C>タイミングのどれが大きいですか?」
メタ認知自覚化を促す「今振り返ると、何が転機でした?」
反事実本音の優先順位「もしやり直せるなら、何を変えますか?」

詰まったテーマは一旦避け、別話題を経由してから違う角度で戻ると答えやすくなることが多いです。

会話としてのインタビュー観を育てる

雑談の延長のような安心感のある場づくり

インタビューの序盤は雑談に近い安心感をつくることが重要です。録音や公開の取り扱い、非公開項目について明示し、相手に安心してもらいましょう。具体的なひと言例も用意しておくとスムーズです。

  • 冒頭で「録音の目的・公開前の確認可否・非公開項目」を明示する。
  • そのまま使える一言例:「いただいた内容は公開前にご確認・修正いただけます」「生配信ではないので、ざっくばらんにお話しください」
  • 録音・録画の可否や扱いは、該当する国・地域のルールに従い、同意を明確に取る。
  • 配置は真正面よりやや斜め、テーブル一枚の安心距離が取りやすい。
  • オンライン時はカメラ位置・照明・音声を事前に確認し、「今日は雑談の続きのつもりで」と一言添えるとよい。反応はやや大きめに、表情で安心感を伝えてください。

場づくりが整うと、相手は肩の力を抜いて話し始めます。小さな配慮が大きな効果を生みます。

プロの到達点をイメージする

プロは聴きながら次の質問を組み立てる「二重処理」と、流れを壊さないメモ術を身につけています。可能なら2人体制で、質問役と記録役を分けると効率的です。取材直後にメモを整理する習慣も忘れないでください。

スキル中身実装
二重処理聞く頭+次を組み立てる頭キーワードに「★(深掘り)」「→(連関)」「?(確認)」など印を付ける
メモ術流れを壊さない記録視線は相手、手元は最小動作。要点だけ単語で
同席運用2人体制質問役と記録役を分け、終盤で「記録役から補足確認」

取材後すぐにメモを清書し、印やマークで論点を整理すると編集作業がぐっと楽になります。

聞き出し上手の資質とふるまい

以下は、聞き出しが上手な人が無意識に行っているふるまいです。習慣化すると会話の引き出しが増えます。

資質/ふるまい具体アクション効果
話しやすい空気を整える確認フロー説明、笑顔、ゆっくりしたテンポ心理的安全性が上がり自発的に語り出す
間を恐れず待てる3〜5秒の沈黙を目安に歓迎(状況に応じて調整)。相手の言葉待ち本音・固有表現が出やすい
相づちから自然に切り返す反射+一歩だけ前進「大変でしたね」→「特にどの瞬間が山場でした?」
5W1Hで掘るWhy攻め一辺倒を避け、多角でいつ/どこ/誰/何/なぜ/どうやって
「ちなみに」「たとえば」で枝を広げる予定調和を崩す枝振り「ちなみに、その選択を家族はどう受け止めました?」

声色や表情、相づちのリズムが相手の安心感に直結します。技術だけでなく、人としての態度が結果を左右します。

最初に投げるべき問いの考え方

アイスブレイクから本題へ橋渡しする導入

導入の設計は、相手を本題へ自然に導くカギです。ウォームアップで口慣らしをした後、早めにテーマに接続すると流れがスムーズになります。

段階目的
ウォームアップ口慣らし・安心「今日はどんな一日でした?」
事実確認語りやすい地面を作る「現在のご担当とチーム体制を教えてください」
本題の入口早めにテーマ接続「今回のプロジェクト、最初に動き出した背景は?」

広く開いた問いから始め、流れをつくる

「まず全体像から伺わせてください。どんな物語でしたか?」のように、広く開いた問いで全体感を掴み、その後で具体へと絞っていくのが基本です。広→具体→意味づけ→未来、の流れを意識すると会話に自然なリズムが生まれます。

対象に応じた初手の例外運用

相手の属性によって最初の問いは変えて構いません。一般の方なら事実ベースの質問で安心させ、著名人や経営者など事前情報が多い相手には軽い雑談の後すぐ核心に入るなど、柔軟に対応しましょう。

聞き出し力を高める3つのポイント

質問の質はインタビューの成果を左右します。ここでは重要な3点を具体策と共に示します。

ポイント具体策失敗回避
Yes/Noで終わらない開かれた質問「どんな」「なぜ」「どのように」を先頭に直後に限定質問で具体化
自分の関心やワクワク感を率直に伝える「今の話、すごく意外でした!」過度な自己主張は控え、相手の物語中心に
ぬかりない事前準備調査→仮説→カテゴリ→優先順位→共有当日は“流れに従う余白”を残す

感情を少し見せると相手の心が開きます。ただし自己主張が強すぎると相手が引いてしまうため、バランスが大事です。

クローズド→オープンの言い換え例

クローズドな質問を開かれた表現に変えると、答えは深まります。以下の例を参考にしてください。

× クローズド〇 オープン狙い
うまくいきましたか?成功した要因は何でしょうか?背景・原因に広げる
大変でしたか?どの部分が一番大変でしたか?具体場面を引き出す
楽しかったですか?どんなときに楽しいと感じましたか?感情の背景を掘る
あなたの役割ですか?どんな立場・役割を担っていましたか?責任やストーリーを出す

質問設計の手順

質問は準備によって磨かれます。以下の手順に沿って設計すれば、当日の迷いも減ります。

手順やること成果物
1. リサーチ公式情報/プレスリリース/過去記事/書籍/SNS/人づて/体験事実メモ、用語集、論点リスト
2. 目的・到達点誰に何を伝えたいか、必須メッセージ3つの到達点(KBF: Key Buying Factors等)
3. カテゴリ設計背景/人物/課題/打ち手/結果/学び/未来セクション見出し案
4. 優先順位時間配分、Must/Should/Could上位10問+補助質問群
5. 事前共有質問シート送付、非公開領域確認当日スムーズ化、認識齟齬の予防(ケースにより、シート記入のみで完了させ当日の短縮も可)

リサーチで得た断片を整理してカテゴリ化し、何を必ず聞くべきかを優先順位付けする。時間配分を決めたら、相手に事前共有して認識合わせをしておくと当日が楽になります。

質問文づくりのコツ

開かれた問いと閉じた問いの使い分けを理解する

オープンな問いは物語や感情の背景を掘るのに向き、クローズドな問いは事実確認や効率化に適しています。適切なタイミングで使い分けてください。

オープンな問いかけ

オープン質問は中盤以降、前提が共有できてから挟むと効果的です。物語や感情の層を引き出すのに役立ちます。

ねらい
物語化「当時を思い出しながら、どんな流れだったか教えてください」
感情の背景「一番苦しかった瞬間は、何が重かったからですか?」

クローズドな確認質問

開始直後や事実確認の場面では、クローズド質問が有効です。短く確かな答えを得るために使いましょう。

ねらい
事実確定「開始は2023年4月で合っていますか?」
選択肢で効率化「主要因はA・B・Cのどれに近いですか?」

6W2Hの軸で考える

質問作りに迷ったら6W2Hを一つずつ埋めていくと抜けがなくなります。数値や時期など、曖昧な点は必ず確認しましょう。

When「最初に兆しを感じたのはいつですか?」
Where「現場はどんな環境/場所でしたか?」
Who「キーパーソンは誰で、どの役割でしたか?」
What「具体的に何が起き、何をしましたか?」
Why「なぜその選択をしたのですか?」
Which「複数案のうち、どれを選び、なぜですか?」
How「どのように進め、どんな工夫を?」
How much/How many「投下時間/費用/人数はどれくらい?」

過去・現在・未来の時間軸で語ってもらう

時間の流れで話してもらうと語りが整理されやすいです。まず「現在」の感覚で足場を作り、過去の転機、そして未来の展望へとつなげていくのが効果的です。

時間典型質問目的
現在「今の状態を一言で言うと?」足場づくり
過去「そこに至るまでの転機は?」物語の厚み
未来「次に何を試したい?」展望と意思

良問と悪問のサンプル

良い問いは、具体的な状況や意味づけ、再現性まで引き出します。一方で誘導や二重質問、あいまいな問いは避けましょう。

望ましい問いの例

意図質問期待される回答
具体化「一番時間がかかった工程はどこで、なぜですか?」ボトルネックの発見
意味づけ「それはあなたにとってどんな意味を持ちましたか?」価値観の言語化
再現性「同じ状況なら何を同じく、何を変えますか?」学びと原則
差別化の切り口「味そのものではなく、材料や作り手のこだわりで特徴はどこに出ましたか?」他メディアにない視点
専門前提の深掘り「他社では少ない素材Xを採用した背景に、Y以外の狙いはありますか?」専門性に根差した核心

避けたい問いの例

問題点悪問何がまずいか
誘導「結局、上層部が悪かったんですよね?」偏り/関係悪化
二重質問「AとBの成果は?あとCの課題も」焦点がぼやける
あいまい「どうでした?」抽象的で広がらない
ネガティブ先入観の植え付け「一般的にXは印象がよくないですが、なぜ使ったのですか?」不要な防御・関係悪化

具体的かつ中立的な言い回しを心がければ、相手は防御的にならずに話してくれます。

その場で深掘りするテクニック

追い質問の重ね方と順序の工夫

追い質問は段階を踏むと効果的です。要点の確認から具体化、情景描写、意味づけへと自然に導くと深い答えが引き出せます。

ステップフレーズ例目的
1. 反射「つまり、最初は手探りだった」認識合わせ
2. ピン留め「“手探り”というのは具体的に?」キーワード具体化
3. 情景化「その瞬間、どこで誰と何を?」5W1Hで肉付け
4. 意味づけ「なぜそれが重要でした?」背景/価値の抽出
5. 展望「次は何を変えたい?」未来の鍵を得る

順序を守ることで、相手は安心して答えを積み重ねられます。感情の出たタイミングでは設計を脇に置き、そちらを優先して深掘りする判断も大切です。

流れに合わせて設計を柔軟に手放す判断

設計どおりに進めるのが必ずしも最良ではありません。強い感情語が出たら、それを追うことで本音に触れられる場合が多いです。迷走し始めたら一度整理の時間を設け、終盤で先送りリストを回収する運用が有効です。

  • 強い感情語が出たら深掘り優先。
  • 先送りリストに「△:後で戻る」印を付け、終盤10分で回収。
  • 迷走したら「一旦整理させてください」と時系列や論点で再構成。
  • 詰まったテーマは別話題で緩和してから別表現で再訪する。

この柔軟性が、深い言葉を引き出す鍵になります。

相談の多いトピック(FAQ)

Q. 質問の並び順はどう設計すべき?

基本は「全体→具体→意味→未来→確認」です。時系列に沿うと相手が語りやすく、ブロック間に一言要約を挟むと橋渡しがスムーズになります。定型フロー例は挨拶→目的確認→バックグラウンド→主題→補足→相手の質問→締め、が実用的です。

Q. 1時間のインタビューでは何問が目安?

目安はメイン10問前後に補助20問を手元に置くスタイル。ただし、会話深掘り型を採るなら「多くても10問」に絞る方法も有効です。量より深さを優先するか、薄く広く行くかは目的に合わせて決めてください。質問数は想定される回答の長さや相手の話速に応じて前後させてください。

おわりに

インタビューの結果は、準備段階で七割が決まり、当日の会話力で残りが形になります。台本に頼りすぎず、問いの型を複数持ち、沈黙と相づちを味方にしてください。相手の物語が自然に立ち上がる場を整えられれば、深い言葉は必ず出てきます。この記事で紹介したフレーム(5W1H/6W2H、過去-現在-未来、質問の型、追い質問の順序)を手元に置き、次の取材で一つずつ試してみてください。小さな改善の蓄積が、「本音を引き出す人」への近道です。

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