はじめに
インタビューの質問リストを探しているあなたが本当に求めているのは、単なる質問例の寄せ集めではないはずです。
この記事では、目的を達成するための質問設計、相手のホンネを引き出す深掘りのコツ、そして読者に響く記事に仕上げる編集術まで、一連の流れを体系的に解説します。
現場でそのまま使える豊富なテンプレートとチェックリストを用意したので、これ一本で、インタビューの準備から公開まで迷わず進められるようになります。
Part 1: 成功を引き寄せる「準備」の技術
質の高いインタビューは、周到な準備から生まれます。当日の深掘りの精度は、ここでの設計で決まります。
Step 1: ゴールを明確にする
まず、インタビューの目的と最終的なアウトプットを具体的に描くことから始めましょう。判断軸が定まることで、質問の優先順位が自然と決まります。
項目 | 具体例 | チェックポイント |
読者ターゲット | 就活生/既存顧客/社内メンバー | 読者は何に悩み、何を期待しているか? |
インタビュー目的 | 人物紹介/部署紹介/顧客理解 | このインタビューで最も明らかにしたい情報は何か? |
成果物の形 | 採用記事/社内報/UXレポート | 文字数、トーン、掲載媒体は? |
目指す読後行動 | 応募/購入/社内での理解促進 | 具体的なKPIは何か?(応募数、滞在時間など) |
伝えたいストーリー | 困難を乗り越えた原動力/チームの結束力 | 読者の心を動かす仮説は何か? |
Step 2: 事前リサーチで解像度を上げる
準備の質が、当日の会話の質を決めます。短時間でも以下の点を押さえるだけで、ありきたりな質問を避け、一歩踏み込んだ対話が可能になります。
リサーチ対象 | 具体例 | 活用ポイント |
相手のプロフィール | 経歴、過去の発言、SNS投稿 | 基本的な確認作業を省き、深掘りに時間を割く |
関連実績・成果 | プロジェクト、数値データ、受賞歴 | 具体的なエピソードを引き出すきっかけに使う |
業界・市場の文脈 | 競合の動き、最新トレンド | 前提知識を共有し、認識のズレを防ぐ |
過去のコンテンツ | 以前のインタビュー記事、登壇資料 | 話題の重複を避け、「前回からの変化」を問う |
社内の関係性 | 所属部署、最近の関心事 | 最新のトピックや文脈に合わせた質問を用意する |
Step 3: 質問形式を使い分ける
インタビューの流れをコントロールするために、質問の形式を意識的に使い分けましょう。
形式 | 定義 | 使いどころ | 例 |
オープン | 自由に回答を促す | 関係構築、背景・価値観の探求 | 「この取り組みの『意義』をどう捉えていますか?」 |
クローズド | 「はい/いいえ」や選択式 | 事実確認、論点の整理 | 「ローンチは今期中で確定ですか?」 |
スケール | 数値で評価を求める | 満足度や重要度の可視化 | 「満足度を10点満点で表すと?その理由は?」 |
仮説検証 | 仮説を提示し反応を見る | 思考の深掘り、意思決定の確認 | 「もし予算が倍なら、最初に何に投資しますか?」 |
対比 | 2つ以上を比較させる | 判断基準や価値観の抽出 | 「A案とB案、直感的に惹かれるのはどちらですか?」 |
【使い分けのコツ】
- 序盤はオープンな質問で自由に語ってもらい、中盤でクローズドな質問で事実を固め、終盤で再びオープンな質問で補足や全体の要約を促すのが王道です。
Step 4: 事前合意で安心感を作る
依頼の段階で丁寧な合意形成を行うことが、当日のスムーズな進行と信頼関係に繋がります。
合意項目 | 具体内容 | 備考 |
目的と読者 | 何のため、誰のための記事か | 期待値のズレを防ぐ |
形式と時間 | 対面 or オンライン、所要時間(例: 60分) | 余裕を持った時間を確保 |
記録の可否 | 録音・録画、写真撮影の許可 | 同意の範囲を明確に |
質問リストの共有 | 事前にどこまで共有するか | 数字や機密情報に関する準備を依頼 |
原稿の確認 | 確認範囲(事実のみ or 表現も)と回数・期限 | スケジュールを事前に合意 |
情報公開の範囲 | オフレコや匿名希望の扱い | その場で指定する方法も伝えておく |
Part 2: そのまま使える!目的・相手別「質問テンプレート」大全
ここでは、様々なシーンで活用できる質問リストを網羅しました。自分の目的に合わせて自由に組み合わせてください。
人物・チームの魅力を引き出す
人柄・キャリアを深掘りする
質問例 | この質問でわかること |
最近、時間を忘れるほど熱中したことは何ですか? | 価値観や情熱の源泉 |
これまでのキャリアで最大のターニングポイントは? | 意思決定の基準や変化への適応力 |
最も誇りに思う成果と、それを支えた行動は何ですか? | 強みと成功の再現性 |
周囲からどんなことで相談されやすいですか? | 他者から認識されている強み |
影響を受けた人や作品があれば教えてください。 | 思考のルーツや価値観の背景 |
これから3年で磨きたいスキルは何ですか? | 成長意欲と将来の方向性 |
チームの文化や業務内容を伝える
質問例 | この質問でわかること |
チームの代表的な1日の流れを教えてください。 | リアルな働き方のイメージ |
新しいメンバーが最初に驚くことは何ですか? | 組織文化のユニークな特徴 |
会議でよく飛び交う言葉や口癖はありますか? | チームの共通言語や価値観 |
逆境のとき、チームはどのように乗り越えますか? | チームワークや問題解決のスタイル |
数字で見るチームの姿は?(人数、案件数、KPIなど) | 定量的な事実で輪郭を明確にする |
他部署に「実は見えていない自部署の苦労」はありますか? | 相互理解を促進し、連携をスムーズにする |
社内・ビジネスシーンで活用する
経営トップの視点を引き出す
質問例 | この質問でわかること |
いま、会社として「賭けている仮説」は何ですか? | 経営の核心にある戦略や挑戦 |
5年後の理想像から逆算した、次の一手は? | 長期的なビジョンと具体的な戦略 |
会社として「変えないもの」と「変えるべきもの」は? | 守るべき価値観と改革の方向性 |
最近の意思決定で、最も難しいトレードオフは何でしたか? | 優先順位と意思決定の背景 |
現場の社員に、今一番期待していることは何ですか? | 組織全体へのメッセージと期待値 |
現場担当者(広報・採用・プロダクト等)に聞く
質問例 | この質問でわかること |
現在のチームが追っている最重要KPIとその背景は? | 戦略と現場の業務の繋がり |
顧客の声は、どのようなプロセスでサービスに反映されますか? | 顧客中心の文化や仕組みの有無 |
競合他社との最大の違いを、ストーリーで語ると? | ポジショニングと独自の強み |
最近の成功事例で、再現性のある成功要因は何ですか? | 組織のナレッジとスケールの可能性 |
今のチームに必要な人材像やスキルを教えてください。 | 採用や育成の方針 |
リサーチ・調査でインサイトを探る
ユーザーの利用実態を明らかにする
質問例 | この質問でわかること |
最後にこのサービスを使った時の状況を、時系列で教えてください。 | 具体的な利用シーンと行動の解像度 |
このサービスが「なかったとしたら」、どうやって解決しますか? | 代替手段とサービスの本当の価値 |
利用前に期待していたことと、実際に使ってみた後のギャップは? | 期待値と現実の差、改善のヒント |
どんな人にこのサービスを勧めたいですか?逆に、勧めませんか? | ターゲットユーザーの解像度 |
購入(利用)の最後の決め手になった情報は何でしたか? | 購買プロセスの重要な意思決定要因 |
Part 3: 質を最大化する「実践」の技術
準備した質問を手に、いよいよ本番です。当日の進行とインタビュー後のまとめ方で、最終的なアウトプットの質が大きく変わります。
インサイトを引き出す「深掘り」の型
良い答えは、良い問いから生まれます。「なぜですか?」を繰り返すだけでなく、角度を変えた質問で思考を深掘りしましょう。
型 | フレームワーク | 例 | 狙い |
感情に迫る | 感情 → きっかけ → 意味づけ | 「その瞬間、どんな気持ちでしたか?何が引き金に?」 | 行動の裏にある動機や価値観を明らかにする |
具体場面想起 | いつ・どこで・誰と | 「最後に使った場面を、映画のワンシーンのように教えてください」 | 抽象的な話を具体的な行動レベルに落とし込む |
例外を探る | うまくいく時 vs いかない時の違い | 「例外的にうまくいった日と、そうでない日の違いは何でしたか?」 | 成功・失敗の要因を特定する |
ラダリング | なぜ? → それが大事なのはなぜ? | 「それが重要なのは、あなたにとってどんな価値があるからですか?」 | 表面的な事実から、根源的な価値観へと掘り下げる |
視点を変える | 自分 → 他者 → 第三者 | 「もしあなたの上司なら、この状況をどう評価するでしょうか?」 | 多角的な視点から物事を検証する |
当日の進行で避けたいNGアクション
せっかくの準備を無駄にしないためにも、インタビュアーとしての基本的な姿勢を忘れないようにしましょう。
- 誘導的な質問: 「〇〇は素晴らしいですよね?」のような同意を求める聞き方はNG。「〇〇についてどう感じますか?」と中立的に問いましょう。
- 「なぜ?」の乱用: 相手を詰問しているような印象を与えがちです。「そう考えた背景を教えていただけますか?」のように、言葉を言い換えましょう。
- 自分の意見を話しすぎる: 主役はあくまで相手です。聞き役に徹し、相手が話しやすい雰囲気作りに集中しましょう。
- 時間の無視: 事前に合意した時間を守るのは基本マナー。「残り10分ですが、最後にこれだけは伺いたいです」など、時間管理を意識した進行を。
インタビュー後の「まとめ方」と編集のコツ
インタビューで得た情報を、読者に伝わる形に編集します。熱量を保ちつつ、冗長な部分を削ぎ落とすのがポイントです。
- 見出しで全体像を示す: 記事の骨格となる見出しを先に作りましょう。「結論 → 理由 → 具体例」のPREP法や、印象的な発言を引用するクォート見出しが効果的です。
- 読みやすさを追求する:
- 一文は短く(60字程度を目安に)。
- 話し言葉の臨場感は残しつつ、「えーと」「あのー」といった不要な言葉は削除。
- 適度に箇条書きや図を使い、視覚的に分かりやすく。
- 発言者の顔が見える工夫: 発言者ごとにアイコンを使ったり、会話形式のデザインにしたりすると、誰が話しているか分かりやすくなります。
- ツールで効率化: 文字起こしは自動化ツールを活用し、編集作業に集中できる環境を整えましょう。
おわりに
良いインタビューは、良い準備と良い質問から生まれます。
この記事で紹介したフレームワークやテンプレートは、あなたのインタビューの質を着実に引き上げてくれるはずです。まずは次のインタビューで、「必須質問を5つに絞り込む」「深掘りの型を1つ試してみる」「PREP法で見出しを設計してみる」など、小さな一歩から始めてみてください。
その積み重ねが、相手の心を動かし、読者に価値を届ける力に変わっていきます。